海洋漂着ごみを拾えば拾うほど、がれきと混ぜて島内に捨てられるという矛盾
2020年12月26日
11月末、フリーダイビング(素潜り)でギネス世界記録を持つ二木あいさんのお誘いで国境の島、長崎県の対馬を訪れた。「ブルーエコノミー」の提唱者グンター・パウリ博士と海洋漂着プラスチックごみの視察のため、対馬に行くから同行しないかとのお誘いだった。ちょうどプラスチックごみ関連の映画『プラスチックの海』の配給をしているので、現実を知りたいと思い、喜んで同行することにした。大量に打ち上げられた海洋漂着ごみに、打ちのめされる気分で視察がスタートした。
現地では、九州大学清野聡子准教授、対馬市環境政策課次長兼課長の舎利倉政司さん、そして一般社団法人対馬CAPPA上野芳喜代表、巴山剛さんらが対応して下さった。まずは、海流と風の関係で比較的海洋漂着ごみが少ないとされる対馬東部の赤島を訪れた。
「比較的少ない」なんて量ではなかった。膨大な量のポリタンク、発泡スチロール、ペットボトル、漁網、ブイ、ペットボトル、プラスチック容器類、木材などの漂着ごみが、積み重なっていた。プラスチック製品の生産地を確認すると、中国、韓国、マレーシア、ベトナムから漂着したものがあった。海には国境がない証拠である。驚愕(きょうがく)した。特に、長い歳月を経て砕かれたマイクロプラスチックが、回収されることもなく地層のように何層にも積み重なっている様子にはショックを受けた。プラスチックの墓場のような場所だった。
対馬市の舎利倉さんは、こう説明した。
「ちょうど東シナ海から日本海に流れ込む海流の、防波堤的な役割を対馬はしています。西海岸に多くの海洋漂着ごみが到着します。年間2万から3万立方メートルのごみが漂着し、そのうち8千立方メートルを回収しています。回収して処分する費用が、約3億円。漂着しているものの種類は、発泡スチロール、プラスチック、漁具など。発泡スチロールが4割を占めています」
「一部の漂着ごみのリサイクルをしています。発泡スチロールを油に変えて、焼却炉の燃料にしています。漂着ごみのモニタリング調査を対馬CAPPAにしていただいていますが、国別で見ると韓国と中国で約7割です。もちろん国内のものもあります。ソフト面では、発生抑制対策を目的に、韓国の学生たちとワークショップをしています。韓国の学生が、対馬に来て海洋漂着ごみ回収活動をはじめて18年近くになります。また、対馬CAPPAには小中学生に海ごみに関する授業を行っていただいています」
その後、より漂着ごみが多いいとされる西海岸に向かった。元寇が最初に上陸したという小茂田浜神社前の海岸は、清掃後できれいだったが、案内しながら対馬CAPPAの上野さんがこう吐露した。
「子どもの頃、海岸でプラスチックごみなど見ることはなかったんです」
提案の一つは、集めた漂着プラスチックごみを分別することなく
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