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コロナは忖度しない

やっぱり世界は法則にしたがっている

須藤靖 東京大学教授(宇宙物理学)

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。当然であるが、さすがの菅政権もやっとその対策に乗り出した。飲食店に営業時間短縮要請を出しておきながら、自分たちはどう考えても不要不急の会食を続ける。驚くべきことにそれがマスコミに取り上げられ批判されようと、反省し悔い改める様子はない。その一方で、飲食店などに対して営業時間のさらなる繰り上げを要請するとともに、罰則規定まで盛り込むことを検討しているという。自らの矛盾した行動を棚上げにしておきながら、苦しんでいる人々が納得してくれるとでも考えているのだろうか。本当に信じがたい。

拡大衆院予算委で答弁する安倍晋三首相(当時)=2020年2月5日
 人事権を楯に、反対意見をもつ官僚を左遷する。明確な展望を欠く朝令暮改の政策を乱発し、有為な人材を失望させ霞が関から流出させる。奇策を弄してまで、東京高検検事長を検事総長に据えようとする。誰が考えても矛盾に満ちた国会答弁を首相が堂々と行ったにもかかわらず、結局それをことごとく他人に責任転嫁するだけで居座り続ける。学術会議会員6名の任命を拒否しておきながら、その理由を説明しない。

 これらはいずれも、まさに総理を代表とする与党国会議員の劣化の象徴だ。数の論理とやらだけに基づく権力を背景として、非論理的主張を声高に繰り返し、実際にそれを認めさせてきたこれまでの成功体験に基づいているのだろう。

 ゼミで真面目に勉強してこなかった学生を教育的見地から叱責しただけで、教員がアカデミック・ハラスメントで訴えられかねない世の中にあって、これらがパワー・ハラスメントにならない理由がまったくわからない。

論理なき強権が拡大させるリスク

 人間社会は法律に従うことになっている。自然界は物理法則に従っている。法律も法則も英語では同じくlawである。しかし、人間にはある割合で法律に従わない人がいる。その場合は、まさに法律にしたがって厳正に処罰すべきである。そしてそれは、国会議員であろうが総理大臣であろうが、はたまた検事長であろうが、同じことだ(それどころか、個人的にはそのような立場の方にこそ厳しい対応を望みたい)。残念ながら、合法と違法の境界はかなり曖昧である上に、忖度というさらに余分な自由度があるため、厄介だ。

拡大新型コロナウイルス感染症患者の処置にあたる医師ら=2020年12月23日、福岡大学病院
 これに対して、同じlawであっても物理法則の場合、それに従わないことは起こり得ない。誤った仮定のもとで行動すれば、それに応じた結果に至る。現在のコロナの感染拡大状況は、まさにその端的な例である。人間社会とは異なり、コロナは忖度してくれないのだ。

 誤解なきよう強調しておけば、私は、科学をもってすればコロナ感染を完全に食い止めることができると主張しているつもりはない。科学にも限界があるのは当然だ。だから、現状をすべて政府の責任だと批判するのは行き過ぎだとも思う。しかし、

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筆者

須藤靖

須藤靖(すとう・やすし) 東京大学教授(宇宙物理学)

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授。1958年高知県安芸市生まれ。主な研究分野は観測的宇宙論と太陽系外惑星。著書に、『人生一般二相対論』(東京大学出版会)、『一般相対論入門』(日本評論社)、『この空のかなた』(亜紀書房)、『情けは宇宙のためならず』(毎日新聞社)、『不自然な宇宙』(講談社ブルーバックス)などがある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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