科学的常識が覆されるかも
2021年01月08日
眼はこころの窓、と言われる。これには両方向の意味があり、眼を見ることでこころの中が覗ける、と同時に感情や意思を表示し、相手の行動に影響を及ぼす。動物界でも蝶の羽根や、孔雀のオスの目玉模様ディスプレーはよく知られている。カラスは案山子(かかし)にはすぐ慣れてしまうが、目玉模様が風でチラチラするといつまでも逃げるという。人も誰かに見られているだけで(それどころか、目玉を描いたポスターなどがあるだけで)行動が変わる。ヒトのアイコンタクトは、生後5日で早くも生じる。逆に無意識の目そらしは嘘のサインだ。また視線方向やまばたき、瞳孔の大きさはいずれも、相手との交流によって同期する、等々(『モアイの白目』小林洋美、東京大学出版会、2019)。
さて、このように魅力と散瞳の関係は常識化しているが、実は疑問の余地がある。筆者らも長らく視線と魅力の関係などを研究してきたが、最近また瞳孔と魅力に関する成果を公表し学界の常識も変化しているので、まとめて紹介したい。また今回の論文公刊までの経緯で、科学論文の査読プロセスについて考えさせられる点があったので、併せて記すことにしたい。
私たちの最新論文では、まずこれまでの常識に反し、魅力的な顔に対して瞳孔は縮むことを示した (リャオら, J.Cog.Neurosci., 2020;図)。もともと瞳孔は(カメラの絞りと同じで)基本的には光量調節のためにある。そのため輝度(明るさ)のわずかのちがいのせいでないことを示すため、多くの統制実験を要した。
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