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世界コンテストで優勝した「不思議な階段立体」

そのからくりを作者が解説します

杉原厚吉 明治大学研究特別教授(数理工学)

拡大Best Illusion of the Year Contestのホームページ。筆者の作品が第一位に輝いた。

ベスト錯覚コンテスト2020で優勝

 2020年のベスト錯覚コンテスト(Best Illusion of the Year Contest)で私の錯視立体の新作「立体版シュレーダー階段図形」(3D Schröder Staircase)が優勝した。このコンテストは、視覚科学の発展のために米国の神経相関学会(Neural Correlate Society)が主催して行われているもので、毎年、世界中から錯視の新作が集まる。2020年の結果は12月11日に発表された。

拡大図1.シュレーダーの階段図形

 優勝した作品は、シュレーダー階段図形と呼ばれる古典的な多義図形に、ほんの少し3次元的な装飾を施したものである。元となるシュレーダー階段図形は図1に示すもので、ドイツの科学者シュレーダーが150年以上前に提案した。この図形は二つの解釈を持つ。その一つは、階段を上から見下ろしたところで、もう一つは階段の裏側を下から見上げたところである。第2の解釈は、図形を180度回転させて上下を逆にすると知覚しやすい。

 今回の作品は、この階段図形に手すりと支えを付けたものである。コンテストの応募規定では所要時間1分以内のビデオで作品を投稿することになっている。優勝したビデオ作品は次のものである。

優勝した錯視立体のビデオ

 ビデオの前半では、古典的なシュレーダーの階段図形を2次元平面上で180度回転させ、それと比較する形で、後半では私の立体を3次元空間で垂直軸の周りに180度回転させた。立体の場合は、回転させても上から階段を見下ろしているという解釈は変わらないが、いつの間にか一番高かったところが一番低いところに変わってしまう。古典的なシュレーダー階段図形とは違う新しい視覚効果が生まれる。

 この立体の展開図を、私のホームページに置いた。これを使えば、紙工作によって立体を作ることができる。

 この作品の階段部分は立体ではなくて絵である。すなわち、

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筆者

杉原厚吉

杉原厚吉(すぎはら・こうきち) 明治大学研究特別教授(数理工学)

1973年東京大学大学院修士修了後、電子技術総合研究所、名古屋大学、東京大学などを経て、2009年より明治大学所属。専門は数理工学。視覚の数理モデルを用いて不可能図形を立体化するなどさまざまな錯視を創作し、立体錯視アーティストとしても活躍。国際ベスト錯覚コンテスト優勝4回、準優勝2回の実績を持つ。

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