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コロナ禍で潜行する「政治による医療支配」

医師会は「指定感染症の格下げ」のためにエビデンスを示せ

川口浩 東京脳神経センター整形外科・脊椎外科部長

 日本医師会の会長や幹部が盛んに国民の危機感をあおって、新型コロナ感染拡大の抑制に躍起である。最近は、政府や分科会の感染対策への批判まで始めた。これに対し、世論やメディアには厳しい反応が見られる。

 「独自に対策も出さないで、他人まかせの批判ばかりのパフォーマンスには呆れる」「医師会は開業医の利益を守るための圧力団体に過ぎない」「最前線で身体を張って戦っている医師のなかには、医師会の会員はほとんどいない」……。

 なかには、こうした医師会の動きの背景を「一部の公的病院ばかりに負担が集中している現状を、むしろ維持したいのが医師会の本音だ」などとする読み解きもある。感染者が増えて開業医に火の粉がかかるのを阻止するために医師会が国民に危機感をあおっている、という見方だ。

日本医師会の会員は、医師の半分だけだが

 確かに、日本医師会の会長が「医療壊滅」などという言葉まで出して喧伝しているのは、エビデンスのない不毛な言葉遊びにしか聞こえない。だがさらに私が看過できないのは「戦争」という言葉を例えに使ったことである。

拡大菅義偉首相と意見交換後、記者の質問に答える日本医師会の中川俊男会長=2021年1月14日、首相官邸
 今回のコロナ禍が絶対に避けなければならないのは、感染者への差別、医療者への偏見、人に対する誹謗中傷、ワクチン供給や治療機会の不公平など、社会の分断を生み出すことである。コロナとの「戦い」が、人々の「争い」に繋がってはならない。「戦争」という言葉は不適切で、会長には医療人として以前に社会人としての資質・見識に疑問を感じる。

 もちろん、日本の開業医全員がコロナから逃避しているわけではない。多くの先生方が、積極的に発熱外来を行って水際でのコロナ対策に貢献されている。そうした強い使命感を持った医師会員の方には、あの会長の軽率な発言はどのように聞こえるのであろうか。

 一方で我々医師の間にも、「医師会の会員は全国の医師の半分程度なのに、医師会長が医師の総意を代表しているかのような発言は慎むべき」という意見がある。私自身も日本医師会の会員ではない。ただし、私は日本整形外科学会の会員であり、この点では実は日本医師会とのつながりがある。

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筆者

川口浩

川口浩(かわぐち・ひろし) 東京脳神経センター整形外科・脊椎外科部長

1985年、東京大学医学部卒。医学博士。米コネチカット大学内分泌科博士研究員、東京大学医学部整形外科教室助手・講師・准教授、JCHO東京新宿メディカルセンター脊椎脊髄センター長などを経て、2018年より現職。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医。国際関節病学会理事、日本軟骨代謝学会理事。

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