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社会学者を科学行政中枢に登用したバイデン政権

政府に批判的な研究者の声に耳を傾け、不平等を是正する社会を目指す

細田満和子 星槎大学大学院教授

拡大トランプ政権に抗議する女性たちのデモで掲げられたプラカードには「Equality Justice Empathy Science=平等、公正、共感、科学」とあった。どれもトランプ政権に欠けていたもの=2020年10月17日、ワシントン、shutterstock.com

黒人女性社会科学者ネルソン氏が科学技術政策の要に

 アメリカのバイデン―ハリス新政権は、科学技術予算を策定するホワイトハウス科学技術政策局(Office of Science and Technology Policy=OSTP)の科学・社会政策担当トップにアロンドラ・ネルソン氏を任命した。ネルソン氏は、科学や政策、社会的不平等の問題を研究する社会学者で、プリンストン高等研究所教授であり、社会科学研究評議会(SSRC:Social Science Research Council)会長も務めている。

拡大アロンドラ・ネルソン・プリンストン高等研究所教授=Dan Komoda/Institute for Advanced Study 提供

 科学誌「ネイチャー」は、新技術が及ぼす社会的影響や医療における人種差別を研究してきたネルソン氏が、国の当該分野のトップになることで、現状に変化が及ぶことを期待する記事を出した。「サイエンス」も、ネルソン氏の任命は、バイデン―ハリス政権が科学技術の分野にもある不平等に対処し、平等を担保した研究を推進しようとする意図を反映している、という記事を出した。

 今日、多くの研究者が、象牙の塔に閉じこもるのではなく、深刻な問題状況のある現場に寄り添い、問題解決を図るために貢献しようとしている。こうした中で、現状に異議申し立てをする黒人女性の社会学者であるネルソン氏が、科学技術行政を担うOSTPの社会・科学政策担当トップに任命されたことは、差別や不平等にまつわる諸問題を解消して、よりよい社会に向かおうとする米新政権の変化への意思を感じさせる。

トップレベルの研究者として多くの業績

 ネルソン氏の研究は、政治社会学、人種・民族学、科学・知識・技術の社会学、医療社会学、社会・文化理論など、いくつかの研究分野を融合させた学際的なもので、科学技術や医療における人種的な偏見や差別を告発している。書籍としては『身体と魂:ブラックパンサー党と医療における偏見との闘い(Body and Soul: The Black Panther Party and the Fight Against Medical Discrimination)』(ミネソタ大学出版局、2011年)や『DNAの社会的生活(The Social Life of DNA)』(ビーコンプレス、2016年)が有名である。他にも、共同編著をした『テニクカラー:人種、技術、日常生活(Technicolor: Race, Technology, and Everyday Life)』(ニューヨーク大学出版、2001年)、『遺伝と未解決の過去(Genetics and the Unsettled Past)』(ラトガーズ大学出版、 2012年) といった著書もある。

 ネルソン氏が会長を務める米国社会科学研究評議会(SSRC)は、

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筆者

細田満和子

細田満和子(ほそだ・みわこ) 星槎大学大学院教授

東京大学大学院人文社会系研究科で博士(社会学)を取得し、2004年からコロンビア大学、ハーバード大学で社会学、公衆衛生学、生命倫理学の研究に従事。2012年に帰国し星槎大学に着任。主著書は『パブリックヘルス』、『グローカル共生社会へのヒント』など。世界社会学会医療部会会長。アジア太平洋社会学会会長。

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