桜井国俊(さくらい・くにとし) 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人
1943年生まれ。東京大学卒。工学博士。WHO、JICAなどでながらく途上国の環境問題に取り組む。20年以上にわたって、青年海外協力隊の環境隊員の育成にかかわる。2000年から沖縄暮らし。沖縄大学元学長。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
沖縄のメディアが懸念する新政権の基地政策
1月20日、ジョー・バイデン氏が米国第46代大統領に就任した。大方の反応は、ホッとしたというのが最大公約数ではなかっただろうか。トランプ前大統領にあおられて1月6日に彼の支持者たちが前代未聞の米連邦議会襲撃を行った後となってはなおさらであった。
副大統領に、女性、黒人、アジア系で初のハリス氏を指名するなど、多様性を重視した政治姿勢も多くの人に希望を抱かせている。これまでの米大統領の就任時と同様、日本の世論ではおおむね期待が先行している。
だが、沖縄の反応は異なる。県内メディアからは、期待だけではなく、懸念が表明されている。最大の不安材料は、名護市辺野古の新基地建設問題を始めとするバイデン新政権の安全保障政策である。1月20日付の沖縄タイムスと1月21日付の琉球新報の社説にそれが顕著に見られる。
沖縄タイムスの社説は、「県民の関心事は、バイデン政権の沖縄基地政策だ。日本政府は、普天間飛行場の返還は「辺野古が唯一の解決策」の考えを変えておらず、新基地建設計画が継続される見通しだ」とする。
そして「アジア政策統括を目的に新設する高官ポストに、キャンベル元国務次官補の起用も決まっている。オバマ前政権下で辺野古移設を主導した人物で、新基地建設がさらに強行される可能性も指摘される」と危惧する。ジャパン・ハンドラーの再登場だ。
2017年に米軍ヘリの部品が落ちた宜野湾市の保育園の保護者たちが「沖縄の子どもの人権に関わる問題」として、バイデン氏に手紙で訴えたエピソードを取り上げ、「民主党政権は、人権を軽んじたトランプ政権が内政を混乱させ国際批判を浴びる様を見てきたはずだ」と釘を刺す。その上で「軍事戦略議論に留めず、人権問題として沖縄の基地問題に向き合うべきだ」と主張している。