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新型コロナワクチンに欠かせなかった「構造生物学」という基礎研究

形を変える突起たんぱく質を押さえ込む手法が必要だった

鳥居啓子 テキサス大学オースティン校冠教授 名古屋大学客員教授

コロナウイルスの突起たんぱく質が「鍵」となって侵入

 新型コロナウイルスの、丸いボール状の本体から沢山の突起が突き出た独特な形はテレビやウェブサイトなどでお馴染みではないかと思う(図1)。コロナウイルスの名前は、王冠(コロナ)のように見えるたくさんの表面の突起(スパイク)に由来する。この突起を形成しているのが突起たんぱく質(スパイクたんぱく質=Sたんぱく質:図2)である。

拡大図1:新型コロナウイルスのイラスト。赤い色の部分が融合前の突起たんぱく質である(実際は赤いわけではない)=andrea crisante/shutterstock.com
拡大図2:クライオ電子顕微鏡から解かれた新型コロナウイルス突起たんぱく質の融合前の構造=ジェイソン・マクレラン博士/テキサス大学オースティン校

 実は、新型コロナウイルスの恐ろしさの秘密の一つは、この突起たんぱく質にある。私たちが、新型コロナウイルスを含んだ飛沫などを吸い込んだとしよう。気道や肺に入ったウイルスは、ヒトの細胞表面にあるACE2と呼ばれる受容体に突起たんぱく質がくっつくことにより細胞内に侵入(=感染)する。すなわち、突起たんぱく質はコロナウイルス侵入の「鍵」であり、私たちヒトのACE2は「錠」である。

 新型コロナの突起たんぱく質は、2003年に流行した重症呼吸器症候群(SARS)のウイルス(SARS-CoV1)のそれよりもずっと強くACE2に結合するため、感染力が高いと考えられている。ACE2は、

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筆者

鳥居啓子

鳥居啓子(とりい・けいこ) テキサス大学オースティン校冠教授 名古屋大学客員教授

1993年、筑波大学大学院生物科学研究科博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、イエール大学博士研究員、ミシガン大学博士研究員などを経て、2009年ワシントン大学教授、11年ハワード・ヒューズ医学研究所正研究員。19年からテキサス大学オースティン校ジョンソン&ジョンソンセンテニアル冠教授。井上学術賞、猿橋賞、米国植物生物学会ASPBフェロー賞など受賞。専門は植物発生遺伝学。

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