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海部宣男さんと宇宙吟遊 ― 天文学者、俳句と短歌を詠む

追悼イベントとして募集、集まった作品を紹介します

谷口義明 放送大学教授(銀河天文学)

拡大写真1:海部宣男さん=2012年、国立天文台の三鷹キャンパス、飯島裕撮影

海部さん銀河の旅はどうですか

 これは私の詠んだ俳句である。五七五、秋の季語である銀河。俳句の形式は整っている。とはいえ、あまりに唐突。説明が必要だろう。

 まず、海部さんとは天文学者の海部宣男さん(前国際天文学連合会長、元国立天文台長)のことである。世界と日本の天文学を牽引されてきたが、2019年4月13日に逝去された。

 振り返れば、多くの方々(天文学者、事務官、企業の研究者、大学院生、学生ら)が海部さんのお世話になった。そこで、みんなで相談し、「海部さんに感謝する会」を企画した。ところが、コロナ禍の影響で通常の形式での実施は困難と判断し、結局2020年12月20日にオンラインで開催した。

 海部さんは文学にも造詣が深く、ご自身で俳句や短歌を嗜まれていたので、感謝する会では「海部さんと文学」というセッションを設けて天文俳句あるいは天文短歌の作品を募集した。名付けて「海部記念宇宙吟遊の会」。すると11人から俳句40句、短歌10首が集まった。その一部を紹介しながら海部さんを偲びたい。

第一部 昴(すばる)

 最初に、昴三部作。海部さんの句からはじめよう。

ビル街の高みの上を寒昴  海部宣男(石黒正人代理投稿)

 昴(すばる)は「おうし座」にある散開星団で、プレアデス星団という名前でも親しまれている。そして、海部さんらがハワイに建設した国立天文台すばる望遠鏡の名前にもなっている。昴は肉眼で見える明るい星々が数個集まっているので、秋の夜空にすぐ見つけることができる。では、昴が季語になるかというとそうではない。俳句の規則で、星座名や星の名前などは季語として使うことができないからだ(星座の見え方は時刻で変わっていくため)。そのため、この句では「寒」をつけて冬の季語にしている。

拡大写真2:昴とすばる望遠鏡のツーショット=Babak Tafreshi/国立天文台

 写真2は昴とすばる望遠鏡のツーショットだ。マウナケア山頂には10台以上の望遠鏡があるが、さすがにビル街とはいえない。海部さんの句は東京で詠まれたものと思うが、すばる望遠鏡のドームの高さは43メートルもあるから、これをビルと見立てても通用しそうだ。

 次は昴の別の和名である六連星(むつらぼし)を詠んだ句だ。

拡大写真3:白樺林の向こうに見える六連星(昴)=畑英利撮影

息白し白樺越しに六連星  石黒正人

 石黒さんは、日米欧が協力して南米チリに作ったアルマ(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)望遠鏡の推進責任者だった人だ。作者コメント

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筆者

谷口義明

谷口義明(たにぐち・よしあき) 放送大学教授(銀河天文学)

1954年、北海道生まれ。東北大学大学院理学研究科天文学専攻を単位取得の上退学。理学博士。東京大学東京天文台(現在の国立天文台)の助手を皮切りに、東北大学、愛媛大学を経て、現在は放送大学教授。専門は銀河天文学・観測的宇宙論。著書「宇宙はなぜブラックホールを造ったのか」(光文社新書)など多数。

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