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沖縄は問う、日本の司法は独立しているのかと

辺野古サンゴ訴訟、常軌を逸した高裁判決

桜井国俊 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

 辺野古サンゴ訴訟の高裁判決が去る2月3日に福岡高裁那覇支部であった。名護市辺野古の新基地建設に向けたサンゴ類の移植をめぐり、沖縄防衛局の申請を許可するよう農林水産相が指示したのは違法だとして、県が指示の取り消しを求めていた訴訟の判決である。福岡高裁は県の訴えを棄却したが、それ自体は県や弁護団の想定内であった。昨秋11月20日に開かれた第1回口頭弁論が即日結審となり、裁判長の訴訟指揮から県の敗訴が確実視されていたからである。

 しかし高裁判決は、沖縄の想像を超えて常軌を逸したものであった。翌2月4日の沖縄の地元紙には「地方自治の理念揺るがす」「県の権限奪う判決」「肥大化続く国の裁量」「地方自治一顧だにせず」などの見出しが躍ったことが端的にそのことを物語っている。

無意味な自然破壊を避ける考えのない異常判決

 この高裁判決は、県漁業調整規則に基づく沖縄防衛局のサンゴの特別採捕許可申請に対し、知事の諾否の応答が農水相の指示の時点で145日経過しており、これは行政手続法6条に基づく標準処理期間の45日を超えており、県の不作為は違法であるというものである。

拡大サンゴ類の移植をめぐって沖縄県が国を相手取った訴訟の判決公判=2021年2月3日、那覇市の福岡高裁那覇支部
 しかしこの判断は、同規則に基づく処分は水産資源法・漁業法を根拠規定とするものであり、したがって行政手続法という法律の標準処理期間の規定がそのまま適用されるといった誤った法解釈に基づくものである。行政手続法3条3項は「地方公共団体の機関に対する届け出で、その根拠となる規定が条例または規則に置かれているものについては、行政手続法は適用されない」としており、判決はこの条項を正しく解釈していないものだからである。

 判決の異常性がとりわけ際立ったのは、大浦湾の軟弱地盤対策のために沖縄防衛局が県知事に対して現在行っている設計概要の変更申請が承認されず、辺野古の埋め立て工事が中断しサンゴの移植が無駄になる可能性があったとしても、法律上の根拠がなければ県はサンゴ移植の諾否を判断しなければならないと言い切ったことである。サンゴ移植の成功率は決して高くない。移植後に工事が中断することになれば、しなくても済んだ移植のために取り返しのつかない自然破壊がなされることとなる。変更申請について「承認」という決着がついてからサンゴ移植の諾否を判断すれば良いというのは、誰が考えても常識的な判断のはずだ。

政府による「法の支配」の無視

 日本が法治国家であるというのは幻想にすぎないという事実が、今や誰の目にも明らかになりつつある。国民一人一人に問われているのは、それを座視するのか否か、ということである。

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筆者

桜井国俊

桜井国俊(さくらい・くにとし) 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

1943年生まれ。東京大学卒。工学博士。WHO、JICAなどでながらく途上国の環境問題に取り組む。20年以上にわたって、青年海外協力隊の環境隊員の育成にかかわる。2000年から沖縄暮らし。沖縄大学元学長。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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