桜井国俊(さくらい・くにとし) 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人
1943年生まれ。東京大学卒。工学博士。WHO、JICAなどでながらく途上国の環境問題に取り組む。20年以上にわたって、青年海外協力隊の環境隊員の育成にかかわる。2000年から沖縄暮らし。沖縄大学元学長。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
辺野古サンゴ訴訟、常軌を逸した高裁判決
昨年9月16日に菅内閣が発足してから5カ月が経過したが、同内閣が発足直後に引き起こしたのが日本学術会議の6名の会員任命拒否問題であった。「総合的・俯瞰的が云々」「多様性が云々」と、その場しのぎの屁理屈をこねていたが、日本学術会議法違反であることは明らかだ。憲法15条の「国民の公務員選定罷免権」などを持ち出すなどして任命拒否を正当化しようとしたが、15条には憲法73条(内閣の職務)の「(内閣は)法律に定める基準に従い、官吏に関する事務を掌理すること」という縛りがあることに頬かむりをしている。
憲法73条に言う「法律」とは、この場合は「日本学術会議法」であり、同法7条2項は「会員は、17条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」としている。そして17条は「日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする」と定めている。現行の「日本学術会議法」を審議承認した1983年の国会では、中曽根康弘首相(当時)らは「政府が行うのは形式的任命に過ぎない」と答弁している。国会における審議承認抜きにこの法解釈を勝手に変更するのは、政府による「法の支配」の無視以外の何物でもない。
辺野古新基地建設に関して国と県は九つの訴訟を争ってきた。訴訟が終了したのは7件で、うち3件は県の敗訴が確定、3件は和解、1件は取り下げており、県が勝訴したものはない。学校教育を通じて、日本は三権分立の国であると教えられてきたが、司法は独立しているのかという疑問を沖縄の人たちは強く持つようになっている。
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