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コロナ後遺症で注目される「筋痛性脳脊髄炎」とは

「慢性疲労症候群」とも呼ばれ、多くの誤解を受けてきた

細田満和子 星槎大学大学院教授

 新型コロナの後遺症として極度の倦怠感、体の痛み、思考力低下の訴えなどが報告され、筋痛性脳脊髄炎(ME)/慢性疲労症候群(CFS)と関連付けられることがある。ME/CFSはこれまで多くの誤解を受けてきた病気で、患者は病気そのものだけでなく誤解にも苦しんできた。ここでは、今わかる範囲でのできる限り正確な情報を紹介するので、ぜひ多くの方にME/CFSについて知っていただきたいと思う。

集団発生してきた筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)

 ME/CFSはこれまで世界的に集団発生を起こしている。例えば1930年代に米国カリフォルニア州ロサンゼルス郡で、1955年の夏には英国ロンドンで、微熱、咽頭痛、頭痛、めまい、視力低下、頚部リンパ節腫脹などの症状を訴える患者が多数出た。そこでイギリスの研究者たちは1956年に医学誌「ランセット」に、「筋痛性脳脊髄膜炎(ME)」と命名することを提案した。

 それから約30年後の1984年には米国ネバダ州インクラインという人口2万人の町で、約200人に激しい疲労感や痛み、思考力や集中力の低下がおき、日常生活に支障をきたすようになった。この事態に対応するために、1988年に米国疾病対策センター(CDC)は専門家会合を開催し、患者団体が反対したにもかかわらず「慢性疲労症候群(CFS)」と名付けた。

 なぜ患者団体が反対したかというと、患者は、この病気が単なる「疲労(Fatigue)」と考えられることを嫌悪したからである。イギリス・カナダ・オーストラリア・ノルウェーなどでは主にMEと呼ばれており、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類においては神経系疾患と分類されている。2019年5月に約30年ぶりに改訂された国際疾病分類第11版(ICD-11)においても、神経系疾患と分類されている。

 日本では1990年代になってから「慢性疲労症候群」として紹介された。そのために長らく「筋痛性脳脊髄炎」という病名は知られることはなかったが、現在では国内外において、MEとCFSの英語の頭文字を併記して「ME/CFS」と表記することが一般的である。

 日本におけるME/CFSの患者数は約10万人と推定されている。アメリカでは80万人余りから250万人と推定されており、全世界では1700万人の患者がいると言われている。ところが日本では、ただの疲労と慢性疲労症候群の違いさえ知らない医師も多い。

拡大カナダの診断基準。「NPO法人筋痛性脳脊髄炎の会」理事長の篠原三恵子氏が翻訳した。

 世界的にME/CFSの診断には、

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筆者

細田満和子

細田満和子(ほそだ・みわこ) 星槎大学大学院教授

東京大学大学院人文社会系研究科で博士(社会学)を取得し、2004年からコロンビア大学、ハーバード大学で社会学、公衆衛生学、生命倫理学の研究に従事。2012年に帰国し星槎大学に着任。主著書は『パブリックヘルス』、『グローカル共生社会へのヒント』など。世界社会学会医療部会会長。アジア太平洋社会学会会長。

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