西村六善(にしむら・むつよし) 日本国際問題研究所客員研究員、元外務省欧亜局長
1940年札幌市生まれ。元外務省欧亜局長。99年の経済協力開発機構(OECD)大使時代より気候変動問題に関与、2005年気候変動担当大使、07年内閣官房参与(地球温暖化問題担当)などを歴任。一貫して国連気候変動交渉と地球環境問題に関係してきた。現在は日本国際問題研究所客員研究員。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
炭素価格が上昇するシグナルこそ不可欠
菅義偉首相は去る1月の施政方針演説で、日本も「2050年カーボンニュートラル化し、(中略)成長につながるカーボンプライシングに取り組む」と述べた。
二酸化炭素(CO₂)の排出に価格を付け、負担する仕組みのことだ。わが国でも、政府の審議会の場では「カーボンニュートラルという歴史的偉業を達成するには従来方式では不十分でカーボンプライシングのような新しい政策の導入が必要だ」という意見が強まっている。総理の発言はこのような背景の下で行われたようだ。国際エネルギー機関(IEA)は「カーボンプライシングはクリーンエネルギーへの移行を加速する重要な政策手段」としている。特に、IEAが「カーボンプライシングはクリーンエネルギーへの移行を加速する」としていることが重要だ。それは、カーボンプライシングの仕組みでは、炭素価格が次第に上昇していくことが予定されているからだ。国際通貨基金(IMF)の「World Economic Outlook 2020」(世界経済見通し)では、IMF事務局が開発した数式に基づき、段階的に上昇するカーボンプライシングが紹介されている。
どういうことか?