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原発事故は終わっていない:東日本大震災から10年

5つの教訓を踏まえて、廃止措置や復興対策の改革案を示す

鈴木達治郎 長崎大学 核兵器廃絶研究センター(RECNA)副センター長・教授

廃止措置と復興対策の改革

 以上の5つの教訓を踏まえて、福島第一原発の廃止措置や、復興対策についての改革案を提示したい。基本的な考え方は、2017年3月の本欄「廃炉措置機関の創設で国が責任を持つ体制に変えよ」に示した3つの改革と変わらないものである。

 第一に、東京電力に廃止措置の責任を負わせるのではなく、国が責任をもって専門の「廃止措置機関」を設置することである。世界の叡智を集めるにも、新たな人材や財源を確保するにも、東京電力1社に任せるには負担が大きすぎる。事故を起こした責任という意味では、東電には資金の負担に加えて現場での作業に従事してもらうことで十分であろう。

拡大3、4号機タービン建屋と海の間を歩く作業員たち=2021年2月1日午後、福島県大熊町
 第二に、「廃止措置・復興基金」の設置である。事故対策費用は、政府の見積もりでも22兆円と言われており、すでに東京電力だけでは負担できないことが明らかとなっている。復興への支援も含めて、市民の負担をできる限り減少させるためには、原子力産業関連企業はもちろんのこと、それ以外にも廃止措置や復興を支援する企業・個人・財団などから寄付を募り、多様な資金調達の道を探ることが望ましい。

 また、独立した基金にすることにより、資金使途の透明性も確保できる。米国のスリーマイル島(TMI)原発事故の際には、日本の電力会社も費用を一部負担しているし、チェルノブイリ事故に際しては、G7をはじめ西側諸国が支援を行い、欧州復興開発銀行が資金の管理・事業の推進を担った。このような経験を踏まえて、福島事故対応のための特別の資金調達・管理組織を立ち上げることも検討に値する。

 第三に、「廃止措置・復興対策の第三者評価機関」の設置である。全体のプロセスの透明性を高め、かつ最善の対策をとっているかどうかの評価を、客観的に独立した立場から評価する機関が求められる。このような組織が存在すれば、汚染水処理問題や、避難解除の意思決定においても、透明性が向上し、信頼感も醸成されると思われる。こういった組織は「独立性」が重要であり、その点で政府内ではなく、独立した機関として設置するのが望ましい。

エネルギー・原子力政策の改革

 さて、事故を踏まえたエネルギー・原子力政策はどうだろうか。2014年と2018年のエネルギー基本計画では、ともに前文において「原子力依存度をできる限り低減する」ことが明記されている。一方で、ともに「原子力発電はベースロード電源」として維持することも述べており、曖昧な位置づけのままになっていた。しかし、2020年12月に発表された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、原子力産業を「成長産業」の一つとして位置づけ、推進の立場をより明確に打ち出した。これでは、「依存度をできる限り低減させる」政策に逆行しているといわざるを得ない。

 確かに、温暖化対策として原子力が重要な役割を果たす可能性はあるだろう。しかし、事故の反省を踏まえれば、従来の拡大政策の改革を検討することが第一に必要である。例えば、石油危機後に原子力発電の立地促進のために導入された「原子力発電立地交付金制度」は見直すべきである。

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筆者

鈴木達治郎

鈴木達治郎(すずき・たつじろう) 長崎大学 核兵器廃絶研究センター(RECNA)副センター長・教授

長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)副センター長・教授。1951年生まれ。75年東京大学工学部原子力工学科卒。78年マサチューセッツ工科大学プログラム修士修了。工学博士(東京大学)。マサチューセッツ工科大エネルギー環境政策研究センター、同国際問題研究センター、電力中央研究所研究参事、東京大学公共政策大学院客員教授などを経て、2010年1月より2014年3月まで内閣府原子力委員会委員長代理を務め、2014年4月より現職。またパグウォッシュ会議評議員を2007~09年に続き、2014年4月より再び務めている。

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