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馬毛島アセスで再び露呈する日本の制度欠陥

防衛省が計画する米軍訓練移転と自衛隊基地設置の問題点とは

桜井国俊 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

 現在、琉球弧では、与那国、石垣、宮古、奄美と自衛隊のミサイル基地の整備が進み、米軍の辺野古新基地でも陸上自衛隊の水陸機動団が共同使用するという構想が露見している。このうえ馬毛島基地が整備されることとなれば、地域一体となっての軍事要塞化が更に加速化する。

拡大種子島の西之表市で開かれたアセス学習会
拡大学習会で話をする筆者

 筆者は、琉球弧に暮らす160万人の市民の一人として、自衛隊基地及び米軍基地による琉球弧の軍事要塞化に反対である。いわゆる「安全保障のジレンマ」により対峙する双方の軍備がエスカレートして一触即発の危機が高まり、ひとたび戦闘が開始されるならば、琉球弧の諸島では地獄図が繰り広げられることが必至だからである。東アジアの平和は、憲法9条の精神に基づき武力によらざる対話によって実現すべきである。

世界標準から大きく遅れた日本のアセス制度

 さて筆者は、環境アセスを専門の一つとする研究者であり、沖縄で実施される各種の環境アセス、とりわけ辺野古アセスが抱える諸問題について分析を行ってきた。その経験に基づき、今回の馬毛島アセスにどう対処すべきか、これが種子島の人々から問われたことであった。それにつけても思うのは、日本のアセス制度のあまりの後進性である。これでは日本の人々の暮らしと豊かな自然は守ることが出来ない。

 世界のアセス制度の標準は1998年6月25日にデンマークのオーフスで採択された「環境に関する、情報へのアクセス、意思決定における市民参加、司法へのアクセス条約」である。2012年3月10日現在、ベルギー、デンマーク、イギリス、フランス、EUなど45の国と地域が批准している。
オーフス条約の背景には、1992年の「環境と開発に関する国際連合会議(UNCED)」で合意された「環境と開発に関するリオ宣言」の第10原則、すなわち「環境問題は、それぞれのレベルで、関心のある全ての市民が参加することによって、最も適切に扱われる」がある。

 具体的にはオーフス条約は、次の3つの権利を定めている。すなわち、

  1. 情報へのアクセス権:市民が、公的な機関が保有する環境情報を開示するよう求めて、その情報を利用できる権利
  2. 意思決定へのアクセス権:市民が、環境に影響を与える事業や政策、行政規則などの意思決定に参画する権利
  3. 司法へのアクセス権:NGO/NPOも含めた市民が、環境に関して訴訟を提起する権利(原告適格の拡大)

である。

 日本のアセス制度がこのオーフス条約の水準に大きく後れをとっていることを誰の目にも明確に示したのは、辺野古アセス訴訟の最高裁判決(2014年12月11日)であった。原告適格なしで上告棄却・門前払いの判決であった。


筆者

桜井国俊

桜井国俊(さくらい・くにとし) 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

1943年生まれ。東京大学卒。工学博士。WHO、JICAなどでながらく途上国の環境問題に取り組む。20年以上にわたって、青年海外協力隊の環境隊員の育成にかかわる。2000年から沖縄暮らし。沖縄大学元学長。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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