メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

馬毛島アセスで再び露呈する日本の制度欠陥

防衛省が計画する米軍訓練移転と自衛隊基地設置の問題点とは

桜井国俊 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

 日本のアセス法第8条第1項(第18条第1項)は、「方法書(準備書)について環境の保全の見地からの意見を有する者は……これを述べることができる」としている。ところが辺野古アセスでは、沖縄防衛局はオスプレイの配備を後出しし(市民が意見を述べることができない評価書でオスプレイ配備を明らかにした。ルール違反の後出しジャンケンである)、市民は米国ジュゴン訴訟に米国防総省が提出した証拠からオスプレイ配備の計画を知っていたので方法書、準備書の段階で問題にしたが、方法書、準備書にオスプレイの記載がないため議論がかみ合わなかったのだ。

拡大かつて種子島―馬毛島間に連絡船が通っていたころの小さな旅客ターミナル
拡大馬毛島の葉山港近くの共有地で観察された絶滅危惧種イワタイゲキ

 実は日本政府は、市民の反発を恐れて米国政府にオスプレイ配備計画の公表を遅らせるように要請していたのである。これは「アセス法が保障する意見陳述権」の侵害であるとして沖縄の市民が訴えたのが辺野古アセス訴訟である。そして辺野古アセス訴訟の最高裁判決は、前述のように原告適格なしで上告棄却・門前払いであった。アセス法第8条第1項(第18条第1項)は、市民の意見陳述権を保障するものではなく、事業者の情報収集のためのものであるというのだ。オーフス条約批准国であれば、3番目の権利で原告適格ありとなったはずのものである。世界標準のオーフス条約と比べると、日本のアセス制度は、20年は遅れているということになる。

市民の声を「聞き置く」

 日本のアセス制度には様々な欠陥があるが、その一つが方法書に対する市民の意見がどのように扱われたかが、調査・予測・評価の作業に着手する前には分からないという点である。

 方法書が提案する調査・予測・評価の方法に疑問を呈し改善を提案すべく意見書を提出したとする。日本のアセス制度では、その意見がどのように取り扱われたかが分かるのは、調査・予測・評価の作業が終わり、その結果が取りまとめられ準備書に記載されて初めて分かるという建て付けになっている。アセス法第14条(準備書の作成)は、準備書に記載すべき事項の一つとして、方法書に対して述べられた一般の意見の概要を掲げているのがそれである。

 準備書を見て自分の意見・提案が無視されたと分かっても、調査・予測・評価の作業は多額の血税を注ぎ込んで既に終了しており、後の祭りである。アセス制度の建て付けが悪すぎるのだ。市民が指摘した方法書の不備が適切に見直されてアセス作業が実施されたのかどうか、準備書を見るまで分からないというのは、アセスの制度としては問題ありと言わねばならない。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

桜井国俊

桜井国俊(さくらい・くにとし) 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

1943年生まれ。東京大学卒。工学博士。WHO、JICAなどでながらく途上国の環境問題に取り組む。20年以上にわたって、青年海外協力隊の環境隊員の育成にかかわる。2000年から沖縄暮らし。沖縄大学元学長。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

桜井国俊の記事

もっと見る