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ファイザー製ワクチン「7回分採取」を考える

「無策」の政府に代わって民間が出した「苦肉の策」の問題点

川口浩 東京脳神経センター整形外科・脊椎外科部長

 これに関して、河野太郎ワクチン担当大臣は3月9日の記者会見で、田村憲久厚生労働大臣らと協議した結論として、「理論上は7回分採取できるので問題ない」「このような現場の創意工夫は歓迎する」「ファイザーも容認している」と発言した。

拡大皮下脂肪の厚さを測る超音波検査を受ける宇治徳洲会病院の職員=京都府宇治市

 インスリン用注射器の問題点としては、注射針の長さ(13 mm)が指摘されている。コロナワクチンは筋肉注射であるのに対し、インスリン注射は皮下注射である。13 mmでは筋肉まで届かない可能性が高い。ところが、日本人の皮下脂肪はコミナティの母国である米国人よりも薄い。事実、日本人330人を対象に超音波診断装置(エコー)で皮下組織厚を測定した研究論文では、男性も女性も10 mm以下だったと報告されている。

 つまり13 mmのインスリン注射針で大部分の日本人の筋肉注射は可能ということである。それでも個人差はあるので、宇治徳洲会病院では個々にエコーで皮下組織の厚さを計測してからワクチン接種している。この手間さえ問題にしなければ「長さの問題」は克服できるということになる。

 もうひとつの7回分採取法は、テルモ社のインスリン注射器類似の「FNシリンジ」の針を13 mmから16 mmに長くしたもので、既に「ワクチン筋肉注射用針」として3月5日に厚労省医薬品医療機器総合機構(PMDA)から製造・販売承認を得ている。このFNシリンジの針の太さは27G(内径:0.20±0.03 mm)である。3月末に生産を始め、順次出荷する。長さが16 mmであれば、エコーの計測は最小限で済むかも知れない。

7回採取用の針でワクチンは壊れないか

 しかし私は、注射針の「長さ」よりも「太さ」を懸念する。宇治徳洲会病院で用いられたインスリン用注射器の針の太さは29G(内径:0.14±0.03 mm)で、テルモのFNシリンジの針は27G(内径:0.20±0.03 mm)だ。いずれもコミナティ付属の標準注射器の25G(内径:0.30±0.03 mm)よりも細い。

 コミナティのウイルスmRNAを封入している脂質ナノ粒子(LNP:lipid nanoparticle)の正確な粒径は開示されていないが、癌をはじめ多くの疾患のRNA治療で用いられているLNPの粒径は大きくても500 nm(0.0005 mm)である。サイズから単純計算すると、29Gの内径でも直接LNPが破壊されることはない。

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筆者

川口浩

川口浩(かわぐち・ひろし) 東京脳神経センター整形外科・脊椎外科部長

1985年、東京大学医学部卒。医学博士。米コネチカット大学内分泌科博士研究員、東京大学医学部整形外科教室助手・講師・准教授、JCHO東京新宿メディカルセンター脊椎脊髄センター長などを経て、2018年より現職。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医。国際関節病学会理事、日本軟骨代謝学会理事。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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