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 本欄で筆者はかねがね、後付けの分析にとどまらず、予測力ある記事を目指してきた。たとえば現時点で米国の政治情勢についてなら、トランプはこれからどうなるか。政治の世界は複雑な力学と想定外が常、「予測力のある記事を」というのはいかにも無謀だが、ここではあえてそれを試みる。誰も近未来に確信が持てないという意味で、今が好機と思うからだ。

トランプの魔法の力とは何なのか

 共和党上院のリンゼイ・グラム議員は親トランプ派の重鎮だが、最近あるインタビューで次のように述べた:「トランプにはダークサイド(後ろ暗い側面)がある。が同時に魔法の力も持つ(だからダークサイドには敢えて目をつぶる)」と(The Guardian、3月8日)。他の親トランプ派の議員たち、たとえばテッド・クルーズらも同様で、早くから「トランプはわれわれの想像を超える力を持っている。侮る者はひどい目に遭う」といった発言をくり返している。実はこれ、トランプ人気に眉をひそめる民主党支持者にも共通の認識だ。

拡大国会議事堂前での混乱=2021年1月6日、米ワシントン/shutterstock
 「想像を超える魔法の力」とは何か。それを問う前に、これらが誰に向けたどういうメッセージかを問うのが、分析の手順だろう。その答えは二重で、まずは有権者、特にトランプ支持者(多くの場合自身の支持者でもある)に向けて、トランプの謎めいたカリスマ性をアピールすること。もうひとつは共和党の同僚議員たちに対して「私のふるまいは民主主義への破壊に見えるかもしれない、が何よりも有権者がトランプを支持している。私の言動はあくまで選挙のため」というメッセージだ。

 たとえば新年早々のワシントン国会議事堂襲撃(1月6日)を受け、上院でトランプ弾劾裁判が行われた。このとき大統領選の投票不正について、クルーズは「不正が実際あったかどうかが重要なのではない。共和党支持者の70%が不正を信じていることが重要。私はその代弁をしているだけ」と述べた。この発言はまさに上記二重メッセージと重なる。結局、票と人気が民主主義の価値に勝つという、皮肉だがありがちな事態が起きた。

そもそも、トランプは「まとも」か?

 さて、今後どうなるかの予測以前に、そもそも

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筆者

下條信輔

下條信輔(しもじょう・しんすけ) 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授。認知神経科学者として日米をまたにかけて活躍する。1978年東大文学部心理学科卒、マサチューセッツ工科大学でPh.D.取得。東大教養学部助教授などを経て98年から現職。著書に『サブリミナル・インパクト』(ちくま新書)『〈意識〉とは何だろうか』(講談社現代新書)など。

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