地震学者は一般人に理解できる説明を
2021年04月01日
強い地震が起こる「確率」を示す「全国地震予測地図2020年版」が、3月26日に政府の地震調査研究推進本部から公表された。
ニュース記事によれば、30年以内に地震に見舞われる確率が「3%以上で高い」とされると言う。示された図を一目する限り、日本全国どこもかしこも「高い確率」だ。
しかし、この手のニュースが流れるたびに、この予測は私たち市民が具体的な行動を起こすのに役に立つのだろうか、という素朴な疑問が沸き起こる。
1995年の阪神淡路大震災も2011年の東日本大震災も、予知できなかった。その後、2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震と仮設住宅暮らしを余儀なくされる方を生み出すような地震が起きたが、これらの被害を減らすのに予測地図は果たして役に立ったのだろうか。
そもそも「30年以内に地震に見舞われる確率が3%以上」と一読して、この「パーセント」が何を表すのか、その意味をわかる人がどれだけいるのだろうか? 私にはわからない点がいくつもある。
一つ目は、パーセントという単位をなぜ使うのかということである。パーセントとは「比率」の単位である。全体を「100」として、その中で対象とする「何か」がどれくらいの「割合」で含まれているかを表すということは誰もがわかる。宝くじの「当たる確率」などは、明確である。例えば、販売数4億4千万枚のうち、1等7億円の本数は22本だとすると、22/4億4千万=2000万分の1=0.00000005となり、これに100をかければ、0.000005%となる。
しかし、地震の確率とは、いったい何が分母で何が分子なのか(そういう単純計算ではないのだとは推測しているが、説明がなければ一般人はそう推測するしかない)。またその30年間という期間設定と確率の関係はどうなっているのか。疑問だらけである。
少し調べると地震調査委員会事務局が作った「長期的な地震発生確率の解説」という文書は出てきた。正直なところ、私のようなその分野の素人にはこの文書を読んでも何がどうなって、この「確率」が算出されたのかは、さっぱりわからない。
二つ目は、「3%」で線引きされる根拠だ。パーセントで表されるものの代表例として、お天気の降水確率があるが、「80%」や「90%」と言われれば、「あー、雨はほぼ降るんだろうな」と思う。しかし、3%で確率が「高い」とは、ごく一般的に考えれば誰も思わないだろう。
それにもかかわらず記事についている凡例では、確かに「3%以上」で、「震度6弱以上の確率」が「高い」というカテゴリーになっている。さらに
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