国際政治を動かす一コマ政治漫画 上
2021年04月08日
日仏両国で、30年間一コマ政治漫画(le dessin de press)を描いてきた経験から、政治漫画の国際政治における役割を考えてみます。
ムハンマド漫画問題(2005年)、シャルリーエブド事件(2015年)など、政治漫画が国際問題になるたびに、歴代のフランス大統領は漫画を擁護するスピーチを行い、国民も百万単位の大規模な街頭デモを繰り広げ、漫画家を支えてきました。
フランス革命以来、政治漫画が民主主義、自由、平等、政教分離の確立に貢献してきたことに対するフランス市民の評価の表れです。
フランスの新聞は、キオスク売りが基本で、宅配はありません。郵便で定期購読している人もいます。毎朝キオスクで新聞1面の漫画を見て新聞購入を決める人が大勢います。漫画の出来が新聞売り上げを左右するのです。キオスクの店員は、1面の漫画がよく見えるように新聞を折り、並べます。元国連事務総長のコフィ・アナンは、一コマ政治漫画が新聞で一番重要な部分だと言っています。
プランチュと一緒に漫画展をやっていると、これらの国々の元首や政治家、大物実業家がよく見にきます。パリの漫画展で、私の漫画の前でゲラゲラ笑っているハリウッドスターのようなひげの中年紳士がいました。ヴィセンテ・ゴメス、当時のメキシコ大統領でした。
プランチュは、これらの国々を飛び回り、展覧会、シンポジウムを開き、各国の元首や政治家、大物実業家、漫画家と親交を結んでいます。彼は、1年のうち数カ月は精力的に旅行しているのですが、毎日欠かさずフランス2紙に漫画を送っています。
1991年、プランチュがチュニジアの首都、チュニスで漫画展をしていた時のことです。当時イスラエル軍にレバノンを追われたPLOは、チュニジアに亡命していました。PLOは武力でイスラエルからパレスチナの解放を目指すアラブゲリラグループで、アラファトがそのリーダーでした。
アラファトの部下のゲリラがプランチュを拉致したのです。
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