従来株を押しのけ、5%のシェアが6週間で70%に。日本は怖さの認識を
2021年04月09日
収束する前の再流行は欧州も同じだ。3月以降、第3波に突入し、今まで優等生だったノルウェーやフィンランドすら急増している。2ー3月に順調な収束を続けたのは、ポルトガルと英国、ロシアのみで、これら3カ国ですら下げ止まり気味で、とても収束とは言えない。
いや欧州だけでなく全世界で3月はコロナが拡大している(図1参照)。秋を迎えた南米だけでなく、南アジア・西アジアもイスラエルを除いて急増しているし、北米も2月まで減少傾向だった米国・カナダが停滞・増加に転じて、減少または低い値で安定している中米・カリブ諸国の値を加えても増加傾向だ。
この増加の原因は、欧州や日本(関西)では明らかに英国株(B.1.1.7株)だ。これは昨年末に次々に「危険な変異」と認識されたコロナの変異株のひとつで、残りの「南ア株」「ブラジル株」は、それぞれ南アと南米全体の流行拡大を引き起こしている。
昨年12月に英国ジョンソン首相から「最大で1.7倍の感染力」と発表され、その危険性を理解した欧州各国は、対英国境封鎖をするなど、最大級の警戒をみせた。そこには「EUから抜けたのだから移動の自由を考慮しなくても良い」という発想もあったかも知れないが、それ以前に1.7倍(1.4-1.7倍)という数字がそれほど危険だったのである。ちなみに日本も2月から同様の対策を導入している。
これほど警戒したにもかかわらず、今では欧州各国で従来株に取って代わっている。すり抜けて入り込んだごくわずかの英国株が、ねずみ算式に増えたからだ。
たとえば欧州で一番緩い対策をとってきたスウェーデンでは、初めて対欧州の国境管理(英国株の流行地からの入国制限)を実施した。それでも図2に示すように大多数の県で第10週(3月8-14日の週)には英国株が過半を占めるようになり、それに伴って感染者数が急増している。
このグラフから、英国株と従来株の感染者数の比率が毎週約1.8倍ずつ高まったことも推定できる。この約1.8倍/週というのも一種の「感染力の差」だが、本来の意味である「一人の感染者が何人に再感染させるか」の差と区別するため、本稿では「倍/週」という単位で表したものを「感染力」とカギ括弧をつける。1.8倍/週の「感染力」の場合、グラフの縦軸である変異株のシェア(F)は
F(一週間後) = 1.8*F/((1-F) + 1.8*F)
で変化する(図の赤点線)。
参考のため、図3に、異なる「感染力」での、変異株のシェア変化の理論値をプロットした。シェアが5%(信頼できる精度で検出され始める時期)の週を第0週としており、50%を越える週は、1.8倍/週の「感染力」なら第5週、1.6倍/週だと第7週と読みとれる。傾きが大きく違うので、大体0.1/週の精度でデータから「感染力」を求められる。
欧州の他の国々の様子は英語版のウィキペディアにまとめられており、それをプロットしたのが図4である。各国ごとにバラツキはあるが、概ね英国株/従来株の比率が1.7-1.8倍/週ずつ高まっている。まさに「ねずみ算」だ。これが「最大で1.7倍の感染力」の意味するところだ。
この状況は日本でも当てはまる。例えば神戸で見つかった英国株だが、そのシェアは1月下旬以来、4.6% → 10.5% → 15% → 22% → 39% → 55%と高まっており、図3との比較から、「感染力」が欧州と同じ約1.8倍/週と推定できる(ちなみに通常の意味での感染力ならその差は1.32倍/人だそうだ)。昨春の欧州株の時とは違い、東アジア特有の「ファクターX」による軽減はなさそうだ。
ということは、
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