わきまえない・女・子どもに向けられる、まなざし(上)
2021年04月15日
わきまえない・女・子ども。現行の社会において、最も歓迎されない三拍子を、ほかに知らない。すっかり日本でなじみとなった、グレタ・トゥンベリのアイキャッチ画像は、まさにその象徴といえる。
ピンクの衣服に身を包み、顔をしかめて演説する16歳の少女。テロップに大きく映し出された文字は、「How dare you!」(よくもそんなことが言えますね!)
画面いっぱいにクローズアップされた顔面と、その強烈な一言でもって、彼女の印象はあっというまに流布していった。一躍脚光を浴びることになった彼女に対して、世間が示した反応といえば、気候変動そのものへの危機感というより、彼女の顔面を皮肉った誹謗(ひぼう)中傷や、日本人にはなじみのない、ハードな言葉の数々に対する批判だった。
視覚優位のメディアが、憤慨する少女の顔をこぞって報道し、大衆からヘイトが生まれる。私の目にはその構図が、きわめて作為的なものに見えて仕方なかった。グレタは、4分強に及ぶスピーチの中で、繊細な感情の発露を繰り返していた。にもかかわらず、多くの場面で選別されたのは、なぜあのしかめ面ばかりであったのか。多かれ少なかれ、その背後にあるのは、日本社会、いや男社会に遍在する、まなざしの残酷さではないか。
そんな居心地の悪さが確信に変わったのは、東京五輪をめぐるここ数カ月間の不祥事だ。
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