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ドイツは来年に脱原発し、脱プルトニウムも果たす

変わる世界のプルトニウム政策(9)

竹内敬二 元朝日新聞編集委員 エネルギー戦略研究所シニアフェロー

 東京電力・福島第一原発の事故から10年。時間の経過が世界の原子力地図を変えている。日本では原発の再稼働が増えず、プルトニウムをMOX燃料に加工して消費するプルサーマルも進んでいない。電気事業連合会は「当面プルサーマルができる電力会社と、できない会社のプルトニウムを交換・融通する」という新手法を決めた。一方、かつて日本と同じ核燃サイクルをめざしたドイツは、来年の「脱原発」に着実に向かっている。脱原発と同時に「脱プルトニウム」も達成する。

ドイツは2022年の脱原発に向け順調

拡大ドイツでは南部バッカースドルフでの再処理工場建設に激しい反対運動が沸き起こった=1986年、住民提供
 ドイツ政府は3月5日、脱原発で生じた損害の補償として、電力会社4社に総額約24億ユーロ(約3100億円)を支払うことで合意した。来年に予定している全原発の停止・廃止に向けた最後の仕上げだ。

 ドイツはかつて、日本と同じように、「使用済み燃料を全量再処理し、核燃料サイクルを実現すること」をめざしてきた。使用済み燃料を、英国とフランスに再処理委託したこと(6200トン)も日本と同じだ。しかし、1986年のソ連・チェルノブイリ原発事故のあと反原発運動が高まり(写真)、ドイツは脱核燃サイクル、脱原発へと大きく方向を変えた(表1)。

拡大表1:ドイツの脱原発の歴史
拡大表2:主な国の余剰プルトニウム

 2011年に「2022年の脱原発」を決めたあと、ドイツはMOX燃料によるプルトニウム消費を急いだ。すべての原発が停止したときにプルトニウムが残っていては処置に困るからだ。

 表2は各国が持つ民生プルトニウム量の推定表だ。各国が量を増やしている中、ドイツの急速な減少が目立つ。消費を急いだことがわかる。ドイツが英仏への再処理委託から得たプルトニウムは50~60トンとされる。ドイツは早い時期から、出てきたプルトニウムを順調にプルサーマルで消費していたが、それでも1996年時点で22.5トンが余剰状態で存在した。その後も再処理からプルトニウムが出続けたが、ドイツは懸命にプルサーマルを実施し、2016年には2.9トンまで減らしていることがわかる。

 その後、2018年末のデータでは、ドイツのプルトニウムは「ゼロ」となっているので、その時点で、原発中の燃料は別としてドイツの余剰プルトニウムはなくなった。再処理で出たものをすべて消費し、来年の原発停止で完全にプルトニウムとも手を切ることになる。

 日本は1996年以降で量が増えている。プルサーマルがあまり進まず、再処理から出るプルトニウムが次第にたまっていったからだ。

「スワップ」と「所有権の移転」でプルトニウム消費を急ぐ

 ドイツは国内にMOX工場をつくったが、1993年に運転が不許可になった。ドイツのプルトニウムは主に英仏両国内にあったが、英国のMOX燃料工場は閉鎖されていたので、工夫が必要だった。

拡大フランス南部、マルクールにあるMOX燃料製造工場。写真の円筒形はプルトニウムを運ぶ容器= 2013年10月17日

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筆者

竹内敬二

竹内敬二(たけうち・けいじ) 元朝日新聞編集委員 エネルギー戦略研究所シニアフェロー

エネルギー戦略研究所(株)シニアフェロー。元朝日新聞編集委員。科学部記者、ロンドン特派員、論説委員などを務め、環境・原子力・自然エネルギー政策、電力制度などを担当してきた。温暖化の国際交渉、チェルノブイリ原発事故、3・11などを継続的に取材。著書は、電力業界が日本社会を支配するような社会産業構造がなぜ生まれたのか、なぜ福島事故がおきたのかを描いた『電力の社会史 何が東京電力を生んだのか』(朝日選書、2013年)。

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