変わる世界のプルトニウム政策(9)
2021年04月22日
東京電力・福島第一原発の事故から10年。時間の経過が世界の原子力地図を変えている。日本では原発の再稼働が増えず、プルトニウムをMOX燃料に加工して消費するプルサーマルも進んでいない。電気事業連合会は「当面プルサーマルができる電力会社と、できない会社のプルトニウムを交換・融通する」という新手法を決めた。一方、かつて日本と同じ核燃サイクルをめざしたドイツは、来年の「脱原発」に着実に向かっている。脱原発と同時に「脱プルトニウム」も達成する。
ドイツはかつて、日本と同じように、「使用済み燃料を全量再処理し、核燃料サイクルを実現すること」をめざしてきた。使用済み燃料を、英国とフランスに再処理委託したこと(6200トン)も日本と同じだ。しかし、1986年のソ連・チェルノブイリ原発事故のあと反原発運動が高まり(写真)、ドイツは脱核燃サイクル、脱原発へと大きく方向を変えた(表1)。
2011年に「2022年の脱原発」を決めたあと、ドイツはMOX燃料によるプルトニウム消費を急いだ。すべての原発が停止したときにプルトニウムが残っていては処置に困るからだ。
表2は各国が持つ民生プルトニウム量の推定表だ。各国が量を増やしている中、ドイツの急速な減少が目立つ。消費を急いだことがわかる。ドイツが英仏への再処理委託から得たプルトニウムは50~60トンとされる。ドイツは早い時期から、出てきたプルトニウムを順調にプルサーマルで消費していたが、それでも1996年時点で22.5トンが余剰状態で存在した。その後も再処理からプルトニウムが出続けたが、ドイツは懸命にプルサーマルを実施し、2016年には2.9トンまで減らしていることがわかる。
その後、2018年末のデータでは、ドイツのプルトニウムは「ゼロ」となっているので、その時点で、原発中の燃料は別としてドイツの余剰プルトニウムはなくなった。再処理で出たものをすべて消費し、来年の原発停止で完全にプルトニウムとも手を切ることになる。
日本は1996年以降で量が増えている。プルサーマルがあまり進まず、再処理から出るプルトニウムが次第にたまっていったからだ。
ドイツは国内にMOX工場をつくったが、1993年に運転が不許可になった。ドイツのプルトニウムは主に英仏両国内にあったが、英国のMOX燃料工場は閉鎖されていたので、工夫が必要だった。
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