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デジタル副読本「人間の生命科学」の大いなる挑戦

「現代社会に生きるための基礎知識」としてWeb版とPDF版が完成、無料でどうぞ

大島美恵子 公益財団法人日本科学協会顧問、前会長

デジタル副読本「人間の生命科学」

 「理系の専門知識はいりません。人間と生命への好奇心だけ必要です」――こんなキャッチフレーズのデジタル副読本「人間の生命科学-現代社会に生きるための基礎知識」が、全国の高等学校の理科・保健体育などの副教材として利用され始めた。筆者が2020年まで11年間会長を務めた日本科学協会が4年前に編集に着手し、雑誌「ニュートン」編集部と国立情報学研究所の協力を得て完成させたものだ。主に学生たちが使うWeb版と主に先生が利用することを想定したPDF版の2種類があり、教員が申し込めば、人数分のIDやパスワードを無償で発行し、すでに1000人を超える利用者がいる。

 デジタルだからこその機能を備えているのが特徴で、関心を持った人はどんどん深く勉強できるようになっている。コロナ禍の影響もあって注目度はアップしてきたが、まだ知らない方も大勢おられるだろう。ぜひもっと利用が広がってほしいと願っている。

現代人に必要な知識を人間の一生を軸に構成

 この「人間の生命科学」は、現代人に必要な生命科学の知識を、豊富な図版を入れつつ人間の一生を軸に構成したものである。日本科学協会の八杉貞雄東京都立大学名誉教授をリーダーとする委員会が原稿をまとめ、「ニュートン」社による美しいデジタル画像が入ったPDF版がまず作成された。さらに、文書と文書の言葉の重なり具合をもとに、ある文書(検索条件)に近い文書(検索結果)を探し出す「連想検索」の専門家である国立情報学研究所高野明彦教授の協力を得て、Web版が完成した。

PDF版はWeb版より高解像度で、PCやiPadにデータをダウンロードして、ネット環境のない教室でもスクリーンやモニターに表示できる。
Web版は、テキスト文中のキーワードがウィキペディアに連動し、またそのキーワードに関連する新書、動画も自動でリストアップしてくれる。

 Web版を使うと、テキスト内の印のついたキーワードが、ウィキペディアの日本語版や英語版、さらに動画や国内で出版された新書などの複数のデータベースに接続し、検索結果が提示される(ここに連想検索の技術を使っている)。読者は、パソコンやモバイル端末機器を用いて検索することができ、テキストを読むと同時に世界中の新しい情報に接して自ら進んでデータを取得し学習することができる。

 日本科学協会は、教室内での授業と生徒・学生の学習目的のためにこれらを無償で提供しており、さらに今春3月には、問題集「人間の生命科学ワークブック」とその回答編を提供し始めた。

自身の身体の仕組みの教育を受けていない女子学生

 筆者は、

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