高い線量を浴びた親から生まれた子130人のDNAを分析してわかった重要成果
2021年05月06日
細胞が分裂してDNAが複製されるとき、ミスが起きて新たに変異が入ることは珍しくなく、私たちは平均して50~100個の新規突然変異を持つという。もし親が被曝したことが遺伝的影響をもたらすとしたら、親の被曝量が多くなるほど子どもの新規突然変異が増えるはずという仮説のもとで研究は進められた。
父親の被曝量は0~4080ミリグレイで平均365ミリグレイ、母親の被曝量は0~550ミリグレイで平均19ミリグレイだった。父親の被曝量は、原爆被爆者の被曝量と比べてもかなり高い(原爆の場合は父も母も被曝量に差はなく、一番多いグループが「500ミリグレイ以上」と分類され、平均値は約140ミリグレイ)。しかし、子どもたちの新規突然変異の数は、親の被曝量との関係は見えず、唯一関係が見えたのは父親の年齢だった。父親が年を取っているほど子どもの新規突然変異の数が多くなっていた。
放射線防護が専門の甲斐倫明・日本文理大学教授は「これまでの研究では人での遺伝的影響は観察されてきていないが、放射線防護上は慎重に動物実験を根拠に遺伝的リスクの大きさが推定されてきた。今回は、人の全ゲノムを調べた点が新しく、低線量での影響を検討する上で130人というサンプル数では少なすぎるという課題はあるが、重要な成果だ。今後の放射線防護では、人のゲノムデータが重視されるようになっていくだろう」と話す。
人に対する放射線の遺伝的影響は、
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