先進型原子炉もコストが合わず、米国でもまだ導入がない
2021年05月24日
相変わらず温暖化対策として原子力発電を推す声がある。
そのような声はバイデン政権の米国でもある。確かに、バイデン政権は、温暖化対策の一つとして「先進型原子炉(Advanced nuclear)」を選択肢とすることを表明している。
先進型原子炉とは、第三世代あるいは第四世代の新型炉とも呼ばれるもので、旧来の技術である軽水炉(第二世代。福島第一原発事故を起こした原子炉はこのタイプ)よりも安全性などを向上させている。
日本でも、2018年に閣議決定された第5次エネルギー基本計画で「新型炉の開発を進める」としている。すなわち、日本でも原発新設の際には、この先進型原子炉の導入が想定されている。
しかし、米国の多くの専門家は、「先進型原子炉は、コスト、スピード、公共の安全、廃棄物処理、運用の柔軟性、グローバルな安全保障の面で、温暖化対策の他の選択肢である、再生可能エネルギー(以下、再エネ)、省エネ、蓄電池などに対抗できない」と考えている。
すなわち、実際には、米国で先進型の原発が導入される可能性は極めて小さい。本稿では、米国で先進型の原発が導入されない理由を具体的に示すことによって、日本における温暖化対策としての原発維持・新設の問題点について述べる。
太陽光や風力は、国際エネルギー機関(IEA)の調査や報告書でも、すでに多くの国・地域で最も安い発電エネルギー技術であり、その導入コストは、国によっては、既存の石炭およびガス火力発電所の運転コストよりも安くなっている。
一方、原発の競争力は著しく低下している。米投資会社Lazardは、米エネルギー情報局と同様に毎年、各発電エネルギー技術のコスト比較を発表している。米国の2020年における新しい原発の発電の平均コスト(初期建設コストと運転コストの両方を含むコスト)は163ドル/MWh以上。これは、新しい風力や太陽光による発電設備の平均コスト(約40ドル/MWh)のほぼ4倍である。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください