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日本を舞台に種分化したカンアオイ類 道筋明らかに

「1万年で1㎞」低い移動能力が奄美諸島など限られた場所ごとに進化を促した!

米山正寛 朝日新聞社員、ナチュラリスト

 江戸時代の日本では、さまざまな植物を愛でる園芸文化が育った。花の美しいキクやアサガオにハナショウブ、サクラソウなどが代表的だが、濃い緑の葉に白い斑や脈の入るカンアオイも観葉目的に珍重され、いくつもの品種が生まれた。

拡大カンアオイ類の1種、ランヨウアオイ。常緑の葉と地際に咲く花がカンアオイ類の特徴だ=写真と図はいずれも奥山雄大さん提供
 こうしたカンアオイの仲間(カンアオイ類)は、徳川将軍家の「三つ葉葵(あおい)」の家紋のモチーフとなったフタバアオイに近縁な、ウマノスズクサ科カンアオイ属カンアオイ節の植物だ。フタバアオイは冬に緑の葉が枯れる落葉性だが、カンアオイ類は寒い冬の時期にも緑の葉をつけている「寒葵」、すなわち常緑性である点が異なる。

日本に約50種が分布

 江戸時代の園芸的な利用は関東~近畿に分布するカンアオイ(別名カントウカンアオイ)などの種が中心だったようだが、現在、カンアオイ類は本州以南の日本列島に約50種が分布している。世界を見回しても日本を含むアジア東部に約60種が知られるだけで、日本を舞台に細かく種分化した「日本の植物多様性を代表する存在」と言える。ただ、これらの種の系統関係を明らかにしようという試みはなされてきたものの、はっきりしたことは分かっていなかった。

 そこで国内外の各地から研究材料として収集したカンアオイ類54種128個体のDNAを新たに解析し、系統関係を解き明かした研究成果が昨年、国立科学博物館植物研究部の奥山雄大研究主幹たちによって論文発表された。これによって、カンアオイ類がどのように多様化して日本列島に分布を広げたのか、その道筋がようやく詳しく示されたのだ。

拡大カンアオイ類の花の多様性。①トコウ②アサルム・イキャンゲンセ③エクボサイシン④フジノカンアオイ⑤ヤクシマアオイ⑥タイリンアオイ⑦サンヨウアオイ⑧オナガカンアオイ⑨タマノカンアオイ⑩ナンカイアオイ。大きさや形、色などが変化に富んでいる

新しい解析手法で描いた系統樹

 奥山さんによると、DNAの塩基配列をもとに生物の系統関係を解き明かすには、従来は1970年代に開発されたサンガー法 (ジデオキシ法とも呼ぶ)で決定された配列が使われてきた。これによって進化の過程を示すさまざまな系統樹が描き出され、生物の進化や多様性に関わる研究が進んだ。

 しかし、配列を決める領域がどうしても限定されるためのデータ量の制約などから、急速に種分化したような生物のグループについては、適切な結果を導くのが難しかった。カンアオイ類についても、まずはサンガー法による解析を試みたが、「全然うまくいかなくて困った」のだそうだ。

 そこで次に

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筆者

米山正寛

米山正寛(よねやま・まさひろ) 朝日新聞社員、ナチュラリスト

朝日新聞社で、長く科学記者として取材と執筆に当たってきたほか、「科学朝日」や「サイアス」の編集部員、公益財団法人森林文化協会事務局長補佐兼「グリーン・パワー」編集長などを務めた。2021年4月からイベント戦略事務局員に。ナチュラリストを名乗れるように、自然史科学や農林水産技術などへ引き続き関心を寄せていく。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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