「1万年で1㎞」低い移動能力が奄美諸島など限られた場所ごとに進化を促した!
2021年05月26日
江戸時代の日本では、さまざまな植物を愛でる園芸文化が育った。花の美しいキクやアサガオにハナショウブ、サクラソウなどが代表的だが、濃い緑の葉に白い斑や脈の入るカンアオイも観葉目的に珍重され、いくつもの品種が生まれた。
江戸時代の園芸的な利用は関東~近畿に分布するカンアオイ(別名カントウカンアオイ)などの種が中心だったようだが、現在、カンアオイ類は本州以南の日本列島に約50種が分布している。世界を見回しても日本を含むアジア東部に約60種が知られるだけで、日本を舞台に細かく種分化した「日本の植物多様性を代表する存在」と言える。ただ、これらの種の系統関係を明らかにしようという試みはなされてきたものの、はっきりしたことは分かっていなかった。
そこで国内外の各地から研究材料として収集したカンアオイ類54種128個体のDNAを新たに解析し、系統関係を解き明かした研究成果が昨年、国立科学博物館植物研究部の奥山雄大研究主幹たちによって論文発表された。これによって、カンアオイ類がどのように多様化して日本列島に分布を広げたのか、その道筋がようやく詳しく示されたのだ。
奥山さんによると、DNAの塩基配列をもとに生物の系統関係を解き明かすには、従来は1970年代に開発されたサンガー法 (ジデオキシ法とも呼ぶ)で決定された配列が使われてきた。これによって進化の過程を示すさまざまな系統樹が描き出され、生物の進化や多様性に関わる研究が進んだ。
しかし、配列を決める領域がどうしても限定されるためのデータ量の制約などから、急速に種分化したような生物のグループについては、適切な結果を導くのが難しかった。カンアオイ類についても、まずはサンガー法による解析を試みたが、「全然うまくいかなくて困った」のだそうだ。
そこで次に
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