桜井国俊(さくらい・くにとし) 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人
1943年生まれ。東京大学卒。工学博士。WHO、JICAなどでながらく途上国の環境問題に取り組む。20年以上にわたって、青年海外協力隊の環境隊員の育成にかかわる。2000年から沖縄暮らし。沖縄大学元学長。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
世界自然遺産の登録を勧告された沖縄・奄美にまつわる「不都合な真実」
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関の国際自然保護連合(IUCN)は5月10日、奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島を世界自然遺産に登録するよう勧告した。そして翌11日、沖縄の地元紙の琉球新報と沖縄タイムスは、沖縄が待ち望んだ朗報として登録を大々的に報じた。
沖縄・奄美は例年になく早い梅雨入りでうっとうしい天気が続いており、また連日報道されるのは憂鬱(ゆううつ)な県内のコロナ感染の状況報告ばかりであった。ところが、その日は登録を祝福するかのように、梅雨が一休みし明るい日差しが輝いた。
琉球弧の島々は、かつて大陸とつながっていた大陸島であり、200万年前から150万年前に大陸から切り離されて現在の琉球弧の島々が生まれた。
琉球弧には数多くの希少な固有種が生息するが、大陸起源の彼らの祖先は、これらの島々に閉じ込められ、そこで適応進化を遂げ現在に至ったのである。やんばる(沖縄島北部)に暮らすノグチゲラやヤンバルクイナはその代表である。
飛べないクイナのヤンバルクイナは、地元では、アガチ(慌て者)、ヤマドゥイ(山鳥)といった名前で呼ばれ、その存在は地元の人たちには知られていた。ただ、公式に発見されたのは1981年である。ニワトリに近いサイズの大きな鳥が、20世紀も後半になって先進国日本で発見されたこと自体驚異であり、いかにやんばるが生物多様性に富む地域であるかということを物語っている。
今回の沖縄・奄美の世界自然遺産登録は、数多くの希少な固有種が生息する琉球弧の生物多様性の保全の必要性が認められたということである。
奄美・琉球諸島を世界自然遺産に登録しようと日本政府が動き出したのは、少なくとも8年前の2013年1月31日までさかのぼることができる。
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