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「生態系」を評価基準とする登録がなぜできなかったのか?

世界自然遺産の登録を勧告された沖縄・奄美にまつわる「不都合な真実」

桜井国俊 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

 この日、日本政府は、ユネスコ世界自然遺産登録に向けて、奄美・琉球諸島を暫定リストに記載した。暫定リスト記載のための提出文書では、奄美・琉球は世界遺産の評価基準のうち、9の生態系および10の生物多様性の基準を満たすとしていた。

沖縄本島北部に広がる「やんばるの森」。手前は米軍北部訓練場=2018年4月、沖縄県、本社機から拡大沖縄本島北部に広がる「やんばるの森」。手前は米軍北部訓練場=2018年4月、沖縄県、本社機から

 環境省は同年12月27日、対象地域を鹿児島県の奄美大島と徳之島、沖縄県の沖縄本島北部(国頭村、大宜味村、東村)と西表島の4島に決定した。ユネスコに推薦書が正式提出されたのは、2017年2月1日であった。

 世界遺産の評価基準は10項目あり、そのうち1~6は世界文化遺産の基準、7~10が世界自然遺産の基準である。7は自然美、8は地形・地質であり、そして9は生態系で、10は生物多様性である。

世界自然遺産の評価基準(環境省のサイトから)(7)類例を見ない自然美および美的要素をもった優れた自然現象、あるいは地域を含む。(8)生命進化の記録、地形形成において進行しつつある重要な地学的過程、あるいは重要な地学的、自然地理学的特徴を含む、地球の歴史の主要な段階を代表する顕著な例。(9)陸上、淡水域、沿岸および海洋の生態系、動植物群集の進化や発達において、進行しつつある重要な生態学的・生物学的過程を代表する顕著な例。(10)学術上、あるいは保全上の観点から見て、顕著で普遍的な価値をもつ、絶滅のおそれがある種を含む、生物の多様性の野生状態における保全にとって、もっとも重要な自然の生息・生育地を含む。

 我々がよく知る世界自然遺産の中で、7~10の四つ全てを満たす自然遺産として登録されているものとしては、米国のグランド・キャニオンがある。

 また、文化遺産と自然遺産の双方で登録されているものを複合遺産と呼ぶが、代表的なものにオーストラリアのエアーズロック(現地語名ウルル)がある。地球生成の歴史を物語る地形・地質であると同時に、先住民の人たちの信仰の対象であることが、登録の理由となっている。

 ところで奄美・琉球諸島は日本で5番目の世界自然遺産となるが、先行して登録された4遺産の評価基準は、屋久島(1993年)が7と9、白神山地(同)が9、知床(2005年)が9と10、小笠原(2011年)が9である。

生態系を外して再提出

 4件のいずれにおいても9の生態系が評価基準となっていることがわかる。奄美・琉球諸島も、日本政府の計画では、知床と同様に9の生態系および10の生物多様性の二つの基準で登録するはずだった。

 ところが、

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筆者

桜井国俊

桜井国俊(さくらい・くにとし) 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

1943年生まれ。東京大学卒。工学博士。WHO、JICAなどでながらく途上国の環境問題に取り組む。20年以上にわたって、青年海外協力隊の環境隊員の育成にかかわる。2000年から沖縄暮らし。沖縄大学元学長。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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