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東日本大震災から10年ではっきりしたこと

わかっていることをどう利用しどう伝えるか 金森博雄さんに聞く

瀬川茂子 朝日新聞記者(科学医療部)

 東日本大震災から10年が過ぎた。地震発生から6時間後、米地質調査所はマグニチュード(M)9という速報値を発表した。翌日、記者は米カリフォルニア工科大の金森博雄名誉教授に電話した。「東北沖でこれほどの巨大地震が起こるとは……」と質問しかけた途端、「そうでしょうか」と、冷静な声が返ってきた。「M9かどうかはともかく、巨大地震が起こりうると考えていた人はかなりいたと思います」。世界の巨大地震を解析してきた金森さんが当時考えたこと、10年たった今、思うことを改めて聞いた。

アウトライアーがあることは常識

拡大米カリフォルニア工科大の金森博雄名誉教授
―― 東日本大震災発生当時、多くの地震学者にとって東北沖のM9は「想定外」で、巨大津波が沿岸を襲う映像に衝撃を受けていました。

 過去100~200年でみたら、東北沖ではチリに比べて小さい地震しか起こっていません。(それが東北沖の地震のルールだと考えていた人は)自分が信じていたルールにあわないことが起こったのでびっくりしたでしょう。

 しかし、自然現象の通例として、(他の値から大きくはずれた)「アウトライアー」がある。アウトライアーがあること自体は常識で、それまでのルールと思われていたことや常識に反することが起こりうると思っていた人もいました。とくに、東北沖の広い範囲でひずみが蓄積していることを示す観測データがあったので、大地震が発生しても不思議はないと考えられていました。ただ、不確定性が大きかったので、はっきりしたことは言えなかったわけです。

 別の言い方をしてみましょう。日本は太平洋プレートが沈み込む境界に位置しています。世界の沈み込み帯をみると、構造の違いによって、しょっちゅう巨大地震が起こったり、ときどき大地震が発生したりと、地震の発生のしかたが違います。

 地震の震源域をアスペリティと呼ばれるパッチとしてイメージすると、小さいパッチがたくさんある場所、大きなパッチがある場所、その中間の場所があるという考え方ができます。東日本大震災前は、東北沖は小さいパッチがたくさんあるところだと考えられ、そのパッチが全部連動して巨大地震になると考えていた人はあまりいなかったかもしれません。

地震の発生パターンはいろいろ

――しかし、いつも同じ地震が起こるとは限らないということですね。 

 地震の発生パターンはいろいろあるのです。さかのぼれば、すでに1928年の今村明恒の論文で、

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筆者

瀬川茂子

瀬川茂子(せがわ・しげこ) 朝日新聞記者(科学医療部)

1991年朝日新聞社入社。大阪本社科学医療部次長、アエラ編集部副編集長、編集委員などを務める。共著書に「脳はどこまでわかったか」(朝日選書)、「iPS細胞とはなにか」(講談社ブルーバックス)、「巨大地震の科学と防災」(朝日選書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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