山内正敏(やまうち・まさとし) 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員
スウェーデン国立スペース物理研究所研究員。1983年京都大学理学部卒、アラスカ大学地球物理研究所に留学、博士号取得。地球や惑星のプラズマ・電磁気現象(測定と解析)が専門。2001年にギランバレー症候群を発病し1年間入院。03年から仕事に復帰、現在もリハビリを続けながら9割程度の勤務をこなしている。キルナ市在住。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
中国の宇宙ミッションへの協力をめぐる欧州の悩み
アラブ首長国連邦(UAE)の火星探査機「Hope」が2月に火星に着き、データを送り始めたのに続き、今度は中国が火星着陸を難なく成功させた。まずは両者の成功を祝いたい。前者については『論座』の拙稿「火星探査機を打ち上げるアラブ首長国連邦」に書いたので、ここでは後者について書く。
中国は初の惑星周回と初着陸を同時に目指した。火星の周回軌道への投入だけでも難度は高く、着陸となれば普通は別ミッションとして挑戦するものだ。にもかかわらず、同時に二つを目指したのは「インドが6年前に成功し、今やアラブ首長国連邦すら火星ミッションが可能なのだから、周回だけでは国威発揚にならない」という政治的思惑もあったのかもしれない。そうだとしても、月の裏側への着陸成功という実績があったからこその成功である。私も火星到着前から「普通に成功するだろうな」と思っていたから、あまり驚きはない。
とはいえ、今回の火星着陸で、中国の太陽系探査技術の高さが改めて示された。もっと難しいミッション、例えば火星からのサンプルリターンも、木星ミッションも、数年内に計画されて2020年代には打ち上げられるのではあるまいか? 既に月からのサンプルリターンにも成功し、過酷な夜が半月続く月面で、探査車「玉兎2号」が2年以上も正常稼働しているのだ。それだけの素地は十分にある。
観測装置こそ日米欧から遅れているが、探査機本体の技術は極めて高い。中国は建国100年の2049年に太陽圏(太陽風の影響範囲)を脱出して星間空間に到達する目標を掲げているが、それはきっと実現するだろう。
日本だって
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