欧州のデータからわかる「人口の6割が打ち終わるまで安心できない」という現実
2021年06月07日
ワクチンは実際の患者数や重症化率にどの程度影響しているのか? それを正しく理解するには、感染者数とワクチン接種率の関係を年齢別に精査する必要がある。専門家会議では、そのあたりの解析もしているはずなのに、なぜか表に出て来ない。
そこで、我流ではあるが、公開データから、誰にでも検証できる方法で調べてみた。専門ではないので細かな疵瑕はあると思うが容赦願いたい。以下、欧州疾病予防管理センター(ECDC)とOur World in Dataにまとめられたデータを使う。
結論からいうと、英国株(B.1.1.7変異株)による欧米諸国の第3波が峠を越えた最大の理由は、各国民の高い警戒や「都市ロックダウン」などの感染対策であり、初夏を迎えた効果も大きかった。ワクチンはそれにちょっとだけ後押ししたに過ぎない。
そもそも、ワクチンによる集団免疫は人口の6~8割が接種しないと達成できないのだ。なのに、上記のような誤解が、政府の「65歳以上の予防接種完了で一安心」という宣伝と共に幅を利かせている。オリンピックや衆院解散がらみの政局とかいう不可解な意図の元になされた世論操作に、日本社会がやすやすと乗せられているかのようだ。
まず、ワクチン普及が一番早かったイスラエルの状況を見てみよう。12月に患者数が急増した同国は、年末から厳しい対策を施した。これが功を奏し、1~2月の2カ月間にかなり減少した。感染力の強い英国株でも、住民の感染対策の意識が十分に高くなれば、従来株と同じペースで感染者数が減ることは、5月の大阪の感染者数急減でも示されている。
この減少は3月に一旦下げ止まりになった。しかし、その後、患者数の急減が始まり、昨夏来の最低値を割ってもなお、週4割減のペースが続いている。これがワクチン効果だろう。というのも、3月第2週の段階でワクチンによる免疫を持っていた人数は、ワクチンを受けた数(3週間前で人口の45%)と感染済み(判明分だけで人口の1割)の合計で約6割あり、集団免疫が機能し始めておかしくなかったからだ。
英国も、12月に患者数が急増した結果、過去のロックダウンよりも厳しい対策を4カ月以上も続けた。過去の急減期と同じペースで減ったのでのもうなずける。しかし3月から段階的にロックダウンを解除した影響で、4月から横ばいとなり、最近は増加に転じている。英国のワクチン普及率は4月頭に45%に達しているから(これに感染経験者1割が「免疫組」に加わる)、5月には集団免疫の効果が出始めるはずだが、それでも増加気味なのだ。かなりワクチン接種が進んでも、対策が緩めば感染者が増えうることを示している。
EU各国では早いところで3月に、遅いところでも4月20日頃に峠を越えて新規患者数が斬減に向かっている。こちらもワクチンの効果よりも、英国株に各国民が警戒を強めた成果という面が強い。
欧州連合(EU)は現時点で人口の4割がワクチンを最低一回受け、3週間で1割増えるペースで増加している。一括購入のお陰でどの国も同じようなペースでワクチン接種が進んでいるが、ワクチン効果の出る3週間を差し引くと、峠を迎えた段階でワクチンによる免疫を持っていた割合は5-15%で、過去感染組(約1割)を加えても集団免疫に程遠いのだ。6月末あたりには集団免疫の効果が出てきそうだが、現時点での減少はワクチン効果より対策の成果の方が大きい。
実際、対策が比較的一定で、ワクチン効果を見極めやすい北欧をみると、優等生のノルウェーは高止まりで足踏みし、デンマークに至っては、5月に再増加している。5月1日の段階でノルウェーは人口の26%、デンマークは人口の23%がワクチン接種を受けていた。厳しい感染対策に加えて、このワクチン接種率でも感染者数は簡単には減らないのだ。
このことは新規患者数の年齢分布からも見て取れる。全ての世代で五月雨式にワクチン接種がすすむ米国と違い、欧州では高齢者から順に接種するから、なかなか若い世代に回って来ない。つまりもしも高齢者の感染者数が減る前に若い世代の感染者数が大きく減れば、それはワクチンとほとんど無関係だということだ。
それをドイツの例で示したのが右図である。まず、年末の第2波では、若い世代が先に増加して、高齢者が後追いするように増加し、若い世代の収束に伴って全体も収束している。同じことは大阪の第4波でも見られる。高齢者が後追いするのは、高齢者世代は感染させられる側であり、感染を広げる側でないからだ。
一方、ドイツ第3波では、
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