使用に慎重なWHO幹部を弁護士会が「告発」する騒ぎに
2021年06月18日
インドは今年3月から新型コロナ感染症(COVID-19)が急増し、大混乱に陥った。多くの州が大村智博士が発見した抗寄生虫病薬イベルメクチンを治療・予防に使う政策をとった一方、使用を禁止する州も出た。禁止の背景には、イベルメクチンの使用を推奨しない世界保健機関(WHO)の方針があるとして、インド弁護士会はWHOの幹部を世界に向けて「告発」する行動に踏み切った。
インドの報道によると、医療施設はどこも殺到する患者の対応に追われ、人工心肺装置「ECMO(エクモ)」などの治療装置も医療用酸素も足りず、病院にかかれない患者が激増して酸素ボンベが闇取引されるなど混乱が続いた。そこで注目を集めるようになったのが、途上国で抗寄生虫病薬として広く使われ、コロナの初期症状への効果も期待されるイベルメクチンである。
今年6月に発表された州別感染者数のトップ6の統計を見ても、ウッタル・プラデシュ州は、上位5州より人口が圧倒的に多いにもかかわらず感染者数は6位になっている。早くからイベルメクチンを使った成果が出ていると考えるのが妥当だろう。
しかし、WHOはイベルメクチンの使用に対して慎重で、今年3月31日に「証拠が非常に不確実」であることを理由に「新型コロナにイベルメクチンを使うべきではない」という指針を発表した。インド連邦政府や州政府の多くは、この指針に従っていたが、今春の感染急拡大を受けていくつかの州政府は独自に治療基準を改訂し、イベルメクチンの使用を打ち出すようになった。
イベルメクチンがコロナ予防に効果があると考えられるようになったのは、アフリカ諸国でコロナ感染者が少ないと気づいた研究者がデータを調べて論文を発表してからである。WHOは、アフリカ諸国のオンコセ ルカ症やリンパ系フィラリア症といった熱帯性感染症の治療・予防のため、1990年代から無償で住民にイベルメクチンを投与してきた。そこで、イベルメクチンを投与された国と投与されなかった国でコロナ感染状況に差があるのかどうかを調べる研究者が出てきた。
最初にこのテーマの研究を発表したのは、日本の谷岡久也博士(谷岡クリニック)で「なぜCOVID-19はアフリカで広がっていないか」とする英文の論文を2020年5月に「Journal of Antibiotics」に投稿した。しかし、雑誌が扱う分野に合致しないとして返却されたため、同年10月、未発表論文を査読なしに掲載する「medRxiv」に投稿、2021年3月26日に公開された。
アフリカのイベルメクチン投与の31か国と不投与の22か国におけるCOVID-19の感染率、死亡率、回復率、致死率をWHOの状況報告書から調べ、投与31か国の罹患率と死亡率は、不投与22か国に比べて統計的に有意に低かったと結論する内容である。
同様の仮説を立てて研究した論文は、コロンビアとアメリカからも発表されており、いずれもイベルメクチン投与国は不投与国に比べてCOVID-19感染者数が低いとしている。
しかし、この3つの論文はいずれも投与・不投与の国の分け方が正確ではない。そこで
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