答え「すでに大きく変わりつつあります」
2021年06月22日
日本の大学は世界ランキングがいつまでたってもパッとしないが、「自分たちで変わる気があるのですか?」とよく聞かれる。実のところ、日本の大学は知らず知らずのうちに、大改革中なのである。特に、コロナ禍では、各研究者の活動の「温度差」がもろに成果の差になって顕在化した。学生が実験しに来ないような研究室で、新しい論文が生まれるはずがない。これがアフターコロナの人事に効いてくる。
人事、つまり教授選考は大学のあり方を決めるキーポイントである。これが21世紀に入って激変している。この激変は、日本の大学のパワーアップにつながると常々感じている。大学の中にいる者として、大学がどう変わってきているのかを報告したい。
ところが21世紀になると、教授が定年退職になると、とりあえずその講座は、構成員も実験室も「更地(丸ごと廃棄して次に備える)」にして、研究内容の再設計を始め、その再設計案に基づいて教授を公募するようになった。当然、教授の番頭のような役目の准教授では、一人で戦略を練って研究費が稼げるとはとても思えないので「お払い箱」になる。
その流れがここのところ、一段と激しくなった。東京大学の場合、教授を公募すると、最低30人は応募してくる。そして驚くことに、東京大学の一つの講座で42 歳(筆者が教授になった年齢)くらいになるまで地道に研究していた内部の准教授よりも、あっちこっちと国内外を渡り歩いてステップアップしてきた外部の研究者のほうが、論文数や獲得研究費、国際ネットワークにおいて、格段に勝っているのである。とにかく、力強く自分を売ってくるので、迫力が違う。
聞いてみると後者の彼らは、学部2年生くらいから研究させろと研究室に押しかけ、卒業するまでに国際学会の査読付き論文を書いて掲載させる。さらに、博士課程になると日本学術振興会(JSPS)の特別研究員(3年で1000万円もらえる)に選ばれ、国際学会で何度も発表し、そのツテで海外留学して友達を作り、国際共著論文もザクザク出してくる。当然、その後の若手向けプロジェクト(たとえば、科学技術振興機構=JSTの「さきがけ」とかJSPSの「学術変革領域研究」とか、今は枚挙に暇がない)を総なめにする。とにかく履歴書が華々しい。
この履歴書は、本人の素質の結果でもあるが、それよりは、そういう「高速道路」を準備して、「メンター」(助言者。すでに業績のある研究者が務めることが多い)が伴走してエールを送り続けた結果と考えたほうが良い。欧米の大学でも、いわゆるテニュアトラック(終身雇用の権利=テニュア=をとれるかどうか審査を受ける期間のこと)で、教授は数人の若者をガチンコ勝負で競争させて勝ち残った者に「総取り」させる。でも日本でこれを実行したら、「高速道路」から外れた者を見殺しにしたと、マスコミから袋叩きにされる。それは欧米でも同様だから、指導教員のほかにメンターとなる教員を用意することが多い。そのほうが指導教員の「いじめ」から金の卵を守るのにも役に立つ。
さらにもうひとつ大事なことであるが、
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