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食品添加物の不使用表示、消費者庁検討会の議論が紛糾

消費者に誤解を与えぬよう、原則に沿ったガイドラインを

森田満樹 一般社団法人Food Communication Compass代表

拡大shutterstock.com
 「無添加」「人工甘味料不使用」などと書かれた食品をよく見かけます。現在、消費者庁はこうした表示について「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会」(以下、ガイドライン検討会)を開催し、適正な表示のための検討を行っています。

 検討会は2021年3月にスタートし、約1年間の検討を経て、2022年3月にガイドラインを公表する予定です。しかし、無添加・不使用表示をどこまで禁止とするのか、消費者団体、事業者団体の中でも意見が大きく隔たり、紛糾しています。ガイドラインの行方はどうなるのでしょうか。

なぜ今、ガイドラインが必要か

 まずは、ガイドライン検討会の経緯について振り返ります。この検討会に先立つこと2年前、消費者庁で「食品添加物表示制度の検討会」(以下、添加物表示検討会)が行われました。筆者はその委員でしたが、現行制度を見直す中で論点となったのが「消費者に誤認を招く無添加表示」の問題でした。

 現在、店頭には無添加・不使用表示を強調した商品が多く並んでいます。わざわざ「使っていない」と表示されているのを見ると、食品添加物はやはり危ないと思われがちです。添加物表示検討会でも、これらの表示が「一部の消費者の食品添加物や表示に関して理解が進んでいない理由の一つと考えられる」と指摘しました。

 消費者庁の消費者意向調査(2017年度)では、およそ5割の消費者が無添加・不使用表示を商品選びの参考としており、そのうち約7割は「安全で健康によさそう」という理由で、選択していました。これらの強調表示が、食の安全の理解をはばんでいるのです。

拡大消費者庁が入る合同庁舎=東京・霞が関

 食品添加物は、1960年代に食中毒事件など安全性の問題が起きて社会問題となりましたが、その後は規制が強化され、消費者の健康に悪影響を脅かすような問題は起きていません。2003年には食品安全委員会が食品添加物のリスク評価を行う仕組みが整い、食品添加物の安全性は格段と向上しています。

 しかし、世の中にはいまだに「添加物は危険」という情報があふれ、そのような情報を定期的に発信する評論家や週刊誌が存在します。その結果、多くの消費者は、添加物に不安を感じます。その消費者の不安にこたえ、差別化した商品を販売しようと食品事業者は「無添加」を看板にした商品を売り出し、消費者はこちらの方が安全と選ぶ…この悪循環に陥っているように見えます。

 中には「無添加」だけ書いて何の添加物か明記していないものや「○○不使用」と表示しているのに他の代替物質を使っているもの等々、明らかに消費者を誤認させるようなケースも見られます。

 現在、食品表示基準は消費者を誤認させる表示を禁止していますが、無添加・不使用に関する具体的な表示禁止事項の解釈が明確ではありません。これが、強調表示の氾濫(はんらん)につながっているとして、添加物表示検討会の報告書(2020年3月公表)では、不使用表示についてどのような場合に表示禁止事項に該当するのかを示す判断基準(メルクマール)のガイドラインをつくること求めました。これを受けて、2021年3月にガイドライン検討会がスタートしたのです。

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筆者

森田満樹

森田満樹(もりた・まき) 一般社団法人Food Communication Compass代表

消費生活コンサルタント、東京海洋大学・大妻女子大学非常勤講師。1985年九州大学農学部食糧化学工学科卒業。食品安全、食品表示、消費者関連について講演・執筆活動を行っている。消費者庁「アフィリエイト広告等に関する検討会委員」など。著書「新しい食品表示がわかる本」(女子栄養学部出版部)。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです