気候変動をめぐる株主提案が増えた今年の総会を振り返る
2021年07月27日
脱炭素への動きが加速化する中、企業や銀行に対する投資家の目が厳しくなっている。5月にあった米石油大手エクソンモービルに対する株主提案では、取締役12人のうち投資ファンドが推薦する環境派とされる3人が取締役に選ばれた。欧米では、BPやJPモルガン・チェースなどのエネルギー関連企業や金融機関に対する「化石燃料からの脱却」を求める株主提案が相次いでいる。
主要7カ国(G7)で、最後まで石炭火力発電に対する公的輸出支援を続けてきた日本の株主総会では、いまだに「石炭からの脱却」が焦点になっている。米国輸出入銀行や世界銀行、欧州投資銀行など、国際的な開発金融機関が相次いで石炭火力への融資基準を厳しくしたのは、いまから8年前の2013年だ。二酸化炭素(CO₂)を回収して地下に貯留する設備(CCS)なしでは達成できない基準にした。
日本政府は、その後も高効率な石炭火力は温暖化防止に役立つとして海外展開を支援。2007年以降は、世界最大の公的資金供与国になってきた。気候変動対策に関しては、先進国とは言えない状況がずっと続いてきた。最近は、先進国とは思えない政策は気候変動以外にもたくさんあるが……。
今年の株主総会。アクティビスト(物言う株主)たちによる日本の企業や銀行に「石炭からの脱却」を迫る株主提案は、より活発化した。いずれも総会では否決されたものの、提案を受けた企業や銀行は、新たに石炭火力からの撤退時期を示すなどの対応をして、株主の批判をかわした格好だ。
「パリ協定の1.5度目標と整合しないことは明らか」。6月18日に東京都内で開かれた住友商事の株主総会では、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)理事で持続可能な開発と援助プログラムディレクターの田辺有輝さんが、同社に詰め寄った。この日は、株主提案したオーストラリアの環境NGO「マーケット・フォース」の代理人として出席していた。
3月に出した提案では、温暖化防止の国際ルールであるパリ協定の目標に沿った事業計画を策定し、年次報告書で開示するよう定款変更を求めていた。ほかの商社が脱石炭化の取り組みを進める中で、同社が炭鉱の取得や石炭火力発電所の新設を許容しているという主張だった。
住友商事は5月7日、「気候変動問題に対する方針」を見直し、「石炭火力については、新規の発電事業・建設工事請負には取り組まない」と表明、2040年後半に撤退することも明らかにした。ただ、
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