信頼できる結論は、厳格な比較試験なしには得られない
2021年07月30日
(多くの)医学・疫学研究の目的は、「AをすればBが起こる(治る、予防できる、等々)」という因果関係を検証することである。
うがいのCOVID-19感染予防効果
ワクチンのCOVID-19感染予防効果
イベルメクチンのCOVID-19治療効果
など全てが因果関係を意味し、それが認められれば、「科学的根拠」があるということになる。そして実は、因果関係を検証するのは容易ではない。
うがいをした人がうがいをしていない人よりCOVID-19感染率が低かったとしよう。これは因果関係か?
少し考えれば、うがいをするような人は手をしっかり洗う可能性も高いことに気づく。つまり上の関連性は「うがいによるCOVID-19感染予防効果」でなく、「相関関係」に過ぎないことが分かる。
因果関係はどうすればわかるのか? 「うがいの有無の他は同等の2集団」の比較をする他はない。ここで「ランダム化試験」が出てくる。
ランダム化試験というのは、「治療する(上記の例ではうがいする)かしないか」をランダムに割り振ることで、治療する集団としない集団の性質を同じようなものとする手法だ。西洋医学では、よくデザイン(設計)されたランダム化試験の結果を最重要視している。「科学的根拠」とは、「信頼できるランダム化試験の結果のこと」と考えていただいていい。
ここで3つ重要なポイントがある。
・メカニズムはエビデンスでないこと
・ランダム化試験であればなんでもよいわけではないこと
・推定するのは集団の効果であり、個人での効果はわからないこと
順を追って説明する。
コロナに限らず、「健康情報」でよく目にするのは生化学的なメカニズムだ。
例えば、
宿便剥がし:宿便は長い間腸内に滞留した便。これが腸内細菌に悪さをしており、サプリなどでこれを排出させることで様々な健康効果が期待される
ビタミンCサプリ:ビタミンCは抗炎症作用があるため、アンチエイシングに効果的
NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)サプリ:長寿遺伝子を活性化させ寿命をのばす
「なるほど……」と思ってしまう方がいることと思うが、これらは残念ながら「全く」エビデンスでない。それぞれ絶妙に真実を入れているから、ちょっとわかりづらい。論破してみる。
腸内細菌が
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