大型魚の漁獲枠を増やすという国際合意ができた今、考えるべきこと
2021年08月11日
これらは他の環境問題にも通じる。脱化石燃料の産業構造転換でも似たような問題に直面することだろう。
国際自然保護連合(IUCN)がクロマグロを絶滅危惧種に指定したのは2016年のことであり、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)は「2024年までに、少なくとも60%の確率で歴史的中間値まで回復させること」を暫定目標とすることで合意した(論座「クロマグロを増やすために本当に必要なこと」)。2020年にも漁獲枠の増枠が提案されたが、コロナ禍でもあり、見送られた。今年の7月末に、東太平洋のマグロ類の管理機関である全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)とWCPFC北小委員会の合同作業部会は、クロマグロ資源が順調に回復しているとして、漁獲量の増枠を合意した。
これは、まだ最終決定ではない。10月上旬にWCPFC北小委員会を経て、12月上旬にWCPFC年次会議に提案され、その場の合意が必要だ。
今回の漁獲枠改訂は過去の合意を反故にしたわけではなく、2017年に合意した際の「漁獲枠制御ルール」に従ったものである。もともと、資源が目標より順調に回復していれば増枠し、不調なら規制を強めることが合意されていた(図1)。
このように、継続監視を続け、最新の資源評価に基づいて漁獲枠を増減するのは、順応的管理と呼ばれ、国際捕鯨委員会で発展した水産資源管理だけでなく、野生鳥獣管理や日本の世界自然遺産管理でも推奨される方法である。さらに、もともと2017年の合意の際にも、評価指標である親魚資源量が減っている半面、未成魚が増えていたことから、資源がすぐに回復することは期待されていた。専門家の認識では、予想通りに増えたとも言える。去年までは
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