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クロマグロの資源回復に小型魚の漁獲を減らす仕組みが欲しい

大型魚の漁獲枠を増やすという国際合意ができた今、考えるべきこと

松田裕之 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、Pew海洋保全フェロー

拡大クルーズ船のそばでジャンプするクロマグロ=2021年7月28日、北海道羅臼町沖の根室海峡、知床ネイチャークルーズ提供
 7月末に、太平洋のクロマグロの漁獲枠を大型魚のみ増やすことで国際合意したと報じられた。資源量は2009年頃まで減っていたがその後回復に転じ、「回復したら漁獲枠を増やす」という2017年の合意通りに増やそうというものだ。その分析自体は妥当であり、資源枯渇の危機を脱しつつあることは評価できる。ただし、2024年までの達成を目指す「暫定目標」の達成が確認される前であり、小型魚は以前ほどではないものの依然として獲りすぎである。季節や漁法による価格差を考慮しないで国内の漁獲枠を配分する不合理は残っているし、養殖の供給過多などの問題も残されている。クロマグロ漁業については、小型魚を獲るのを控え、得られる収益を持続可能に拡大し、その収益をうまく配分する仕組みが欲しい。

 これらは他の環境問題にも通じる。脱化石燃料の産業構造転換でも似たような問題に直面することだろう。

クロマグロが絶滅危惧種に指定されてからの動き

 国際自然保護連合(IUCN)がクロマグロを絶滅危惧種に指定したのは2016年のことであり、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)は「2024年までに、少なくとも60%の確率で歴史的中間値まで回復させること」を暫定目標とすることで合意した(論座「クロマグロを増やすために本当に必要なこと」)。2020年にも漁獲枠の増枠が提案されたが、コロナ禍でもあり、見送られた。今年の7月末に、東太平洋のマグロ類の管理機関である全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)とWCPFC北小委員会の合同作業部会は、クロマグロ資源が順調に回復しているとして、漁獲量の増枠を合意した。

 これは、まだ最終決定ではない。10月上旬にWCPFC北小委員会を経て、12月上旬にWCPFC年次会議に提案され、その場の合意が必要だ。

 今回の漁獲枠改訂は過去の合意を反故にしたわけではなく、2017年に合意した際の「漁獲枠制御ルール」に従ったものである。もともと、資源が目標より順調に回復していれば増枠し、不調なら規制を強めることが合意されていた(図1)。

拡大図1:太平洋のクロマグロの「漁獲制御ルール」の概念図。灰色の2本の矢印は著者加筆。資源回復予測に基づき、漁獲量を見直すことが合意されていた。
水産庁資料

資源が増えれば漁獲枠を増やす「順応的管理」

 このように、継続監視を続け、最新の資源評価に基づいて漁獲枠を増減するのは、順応的管理と呼ばれ、国際捕鯨委員会で発展した水産資源管理だけでなく、野生鳥獣管理や日本の世界自然遺産管理でも推奨される方法である。さらに、もともと2017年の合意の際にも、評価指標である親魚資源量が減っている半面、未成魚が増えていたことから、資源がすぐに回復することは期待されていた。専門家の認識では、予想通りに増えたとも言える。去年までは

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筆者

松田裕之

松田裕之(まつだ・ひろゆき) 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、Pew海洋保全フェロー

京都大学理学部および同大学院博士課程卒業(理学博士)、日本医科大学助手、水産庁中央水産研究所主任研究官、九州大学理学部助教授、東京大学海洋研究所助教授を経て 2003年より現職。GCOE「アジア視点の国際生態リスクマネジメント」リーダー(2007-2012)、日本生態学会元会長、日本海洋政策学会理事、個体群生態学会副会長。ヨコハマ海洋みらい都市研究会共同代表。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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