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コロナ禍での「自殺者増、出生数減」は欧州には当てはまらない

字面を見ると「緩い」が、実質的には欧州より「厳しい」日本の対策

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

拡大秋田市では、県外客は入店しないよう求める貼り紙を出す飲食店もみられた=2021年5月6日、秋田市大町4丁目
 コロナ禍が自殺者数や出生数(妊娠数)にどんな影響を与えたのか気になっていた。
拡大日本の2016ー2021年の月別出生数。前年より減るトレンドがあり、2021年初頭はとくに減りが大きい。
政府統計ポータルサイト

 この手の速報の早い日本では、既に出生数の急減と自殺者の増加が判明している。昨年の第一波の間こそ自殺者は減ったが、その後増加して特に若い女性の自殺者がコロナ禍の期間に増えた(朝日新聞記事)。また、妊娠数(今年の出生数として反映)は、これまでのトレンド(4-5%減/年)以上に減っていることが判明している(右図)。

自殺者が増えていない中欧・北欧

 ならば、コロナ禍の被害が日本の10倍で、対策も厳しかった欧州は、もっと影響が大きいだろうと思っていた。しかしスウェーデンの統計結果は意外なものだ。自殺者数が2019年より減っており(長期統計的には増えていないという言い方になる、下の左図)、その理由を研究者が分析する新聞記事も出た

 また、出生数は今年2月以降微増していて、出生数減少の過去のトレンドを差し引くと実質的な増加と判断して良いだろう(上の右図)。

 自殺が増えていないのはスウェーデンだけではない。ドイツオーストリア英国イングランド地方の速報でも微減で、少なくとも増えていない(統計的にはここまでしか言えない)。

 出生数の増加はドイツでも見られて、今年3月は過去20年で最大の出生数となった。「コロナによるベビーブーム」と報道しているところもあるぐらいだ。

 日本とここまで違うのは何故か? それを解明できれば、コロナ禍に対する各国の対策について、コロナによる死亡率から見えるものとは異なる側面が見えるだろうし、将来類似のパンデミックが起こった時の最適対策を考えるのに役立つだろう。そのためには他の国々のデータを加えた専門家による分析が必要だ。本来なら、私の出る幕はない。

 それでも私は、スウェーデンに住んでいる者の実感として、「日本の対策のほうが、体感的には欧州の対策より辛かったからではないか」という疑問を覚えてしまう。そこを出発点に、この統計結果の背景を考えてみたい。

国により対策には大きな差

拡大ロックダウンで通りの両側に並ぶ店がほぼすべて閉店し、閑散としたローマの中心街=2021年1月5日
 コロナ禍では各国で対策に大きな差が出た。感染の実態が判明するにつれて、違いは小さくなっていったが、それでもフランス等の南欧の「強力なロックダウンと、その解除を繰り返す」というやり方と、スウェーデン等の北欧の「同じレベルの制限を年単位で続ける」というやり方といった、民族や生活スタイルに合った違いが出た。日本の場合は、「ロックダウンをしない」「緊急自体宣言時以外は強制的な制限もしない」という、字面だけ見れば北欧の方式よりもさらに緩い規制が特徴だ。

 北欧の中でも一番対策が緩かったのがスウェーデンだ(論座「外国から誤解され続けているスウェーデンのコロナ対策」)。商店は最後まで閉鎖せず面積比例の来店者数制限をしたのみで、そこでのマスクの勧告すらしなかった。小中学校も異常に感染の多い街のみで短期間閉鎖するだけだった。

 そのスウェーデンですら

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筆者

山内正敏

山内正敏(やまうち・まさとし) 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

スウェーデン国立スペース物理研究所研究員。1983年京都大学理学部卒、アラスカ大学地球物理研究所に留学、博士号取得。地球や惑星のプラズマ・電磁気現象(測定と解析)が専門。2001年にギランバレー症候群を発病し1年間入院。03年から仕事に復帰、現在もリハビリを続けながら9割程度の勤務をこなしている。キルナ市在住。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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