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コロナはどのように終焉するのだろうか

感染した劇作家の一人芝居を見、クリスタキス著『疫病と人類知』を読んで考えたこと

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

拡大坂手洋二が演じる『悪魔をやっつけろ〜 COVIDモノローグ〜』(デヴィッド・ヘア作)=姫田蘭撮影
 東京の新型コロナ感染者数が急増している最中に、ベルリン国際映画祭金熊賞受賞の英国の劇作家デヴィッド・ヘアが自身の感染体験をもとに書いた一人芝居『悪魔をやっつけろ〜COVIDモノローグ〜』(劇団燐光群)を座・高円寺2で見た。仕事場で感染し、最初は軽症と思えたのが、次第にさまざまな症状が出てきて深刻化、だが入院することなく回復した顛末を語りながら、英国政府のコロナ対策のひどさに憤る。坂手洋二が演じる主人公のモノローグを聞きながら、日本との違いや共通点が頭の中を飛び交った。そして、全世界を襲ったこの厄災のこれからに思いを巡らせずにはいられなかった。
拡大イスラエルの新規感染者数の推移。縦軸は100万人当たりの新規感染者の7日間移動平均。今年7月に入って再び急増している=Our World in Data
https://ourworldindata.org/covid-cases

 劇中に出てきた「中世」という言葉が通奏低音となって頭の中で鳴り響く。人類は驚きの早さでワクチンを手にしたけれど、いち早く接種が行き渡ったイスラエルでさえ今年7月以降に感染者が急増している。8月に入っても急増は止まらず、今や人口当たりの感染者数は世界トップクラスだ。

 感染力の強い変異株のせいだと説明されているが、結局、感染を押しとどめる対策は「人同士の接触を減らす」に尽きるのだとすれば、まさに中世と変わらないということになる。

日英でこんなに違う「自宅療養」

拡大英国と日本の新規感染者数の推移。縦軸は100万人当たりの新規感染者の7日間移動平均=Our World in Data
https://ourworldindata.org/covid-cases
 日英を比較しようとするとき、まず押さえておきたいのは英国は日本よりはるかに感染状況がひどいということだ。これまでの感染者数も死者数も人口当たりで比べて日本の10倍以上で、現在でも1日の感染者数は人口当たりで日本の3倍以上だ(左のグラフ)。

 一方、医療制度は病院を自由に選んで行ける日本に対して、英国では国営医療システム「国民保健サービス(NHS)」が中央集権的にコントロールしているという違いがある。かかりつけ医が決まっていて、その指示があって初めて大きな病院に行く。通常時はそれを「不自由」と感じる英国民も多いようだが、コロナに関してはNHSのお陰で入院が必要な状態になると速やかに入院できる態勢が構築できている。

 自宅療養に入った主人公はかかりつけ医と1日に2回、テレビ電話でチャットをする。かかりつけ医は「画面の様子より声の感じで、より多くのことを判断できる」と言ったそうだ。このくだりを聞いて、日本の「自宅療養」とはまるで違うと痛感した。

 日本政府が

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筆者

高橋真理子

高橋真理子(たかはし・まりこ) ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

1979年朝日新聞入社、「科学朝日」編集部員や論説委員(科学技術、医療担当)、科学部次長、科学エディター(部長)、編集委員を経て科学コーディネーターに。2021年9月に退社。著書に『重力波 発見!』『最新 子宮頸がん予防――ワクチンと検診の正しい受け方』、共著書に『村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか?』『独創技術たちの苦闘』『生かされなかった教訓-巨大地震が原発を襲った』など、訳書に『ノーベル賞を獲った男』(共訳)、『量子力学の基本原理 なぜ常識と相容れないのか』。

 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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