この夏に映画館で見たい、平和を考える感動2大作
2021年08月19日
76年目の原爆の日を今年も迎えた。今年はいつもと異なる状況での原爆の日だった。パンデミック下のオリンピック開催で、毎日増加する感染者数と熱戦を繰り広げるスポーツ観戦という、我ながら異常な心理状態に置かれた毎日であった。しかし、本来「平和の祭典」であるオリンピック中に、被爆国からの平和のメッセージが全く発信されなかったことは、極めて残念であった。オリンピックの開催意義を改めて考える機会となった。そんな中、「平和」を考えるのにふさわしい、この夏に注目される「竜とそばかすの姫」と「映画 太陽の子」という2本の映画を紹介したい。ともに、楽しみ、考えさせられる感動大作であった。
細田守監督の最新作「竜とそばかすの姫」は、予告編やポスターから「美女と野獣」のインターネット版、と思われる方も多かったと思う。確かに、似たような設定や場面も出てくるし、「見かけではなく中身を理解すること」の大切さを訴えている点では、共通する面も多い。しかし、「美女と野獣」をはじめとして、ディズニーの物語はやはり「王子や姫」といった「統治する側」に期待する「正義」がテーマとなっているものが多い。悪を懲らしめる「勧善懲悪」のストーリーにのった強いヒーローやヒロインが主人公なのだ。
今回のタイトルに「姫」という呼称が使われているために、多少の誤解を生んでいるかもしれないが、今回もやはり「田舎でインターネット空間に閉じこもる平凡な女子高校生(すず)」が主人公であり、「竜」も権力とは正反対の人物を象徴する存在なのだ。したがって「美女と野獣」に出てくるヒーローやヒロインを期待していると多少裏切られるかもしれない。
最後にすずの力を発揮させるのは、決して大きな「正義」ではなく、「弱者」に対する「共感」であり、その共感が一人の人間としての「正義感」とつながって、物語はエンディングを迎える。ここには、細田監督の「弱者に寄り添う優しさ」があふれ出ていて感動を誘う。この「弱者に寄り添う優しさ」は、これまでの「バケモノの子」や「おおかみこどもの雨と雪」に共通するテーマでもあり、これが現在の「多様性」や「ジェンダー」問題にもつながる「平和」への細田監督からのメッセージだと思う。平和は権力が作るものではなく、一人ひとりの「優しさ」が作るのだ。
ただ、そのようなストーリーだけではなく、この映画は映像美と音楽の素晴らしさも見ものだ。ぜひ大きなスクリーンと音響効果のある映画館でみていただきたい。
この作品「映画 太陽の子」は、昨年NHKで放映された同名のドラマを拡大映画化したものであり、三浦春馬の遺作としても話題を呼んだ。物語は、京都大学で原爆製造のための研究に取り組む実在の科学者グループをモデルに、そこに参加していた若い科学者「修」と、戦地から戻りまた出征する弟「裕之」、そして、二人の幼馴染である「世津」の3人の若者が、戦争状況が悪化する中で葛藤する物語である。
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