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「竜とそばかすの姫」と「映画 太陽の子」

この夏に映画館で見たい、平和を考える感動2大作

鈴木達治郎 長崎大学 核兵器廃絶研究センター(RECNA)副センター長・教授

 最後にすずの力を発揮させるのは、決して大きな「正義」ではなく、「弱者」に対する「共感」であり、その共感が一人の人間としての「正義感」とつながって、物語はエンディングを迎える。ここには、細田監督の「弱者に寄り添う優しさ」があふれ出ていて感動を誘う。この「弱者に寄り添う優しさ」は、これまでの「バケモノの子」や「おおかみこどもの雨と雪」に共通するテーマでもあり、これが現在の「多様性」や「ジェンダー」問題にもつながる「平和」への細田監督からのメッセージだと思う。平和は権力が作るものではなく、一人ひとりの「優しさ」が作るのだ。

 ただ、そのようなストーリーだけではなく、この映画は映像美と音楽の素晴らしさも見ものだ。ぜひ大きなスクリーンと音響効果のある映画館でみていただきたい。

「映画 太陽の子」 正面から「科学と戦争と青春」を扱う

 この作品「映画 太陽の子」は、昨年NHKで放映された同名のドラマを拡大映画化したものであり、三浦春馬の遺作としても話題を呼んだ。物語は、京都大学で原爆製造のための研究に取り組む実在の科学者グループをモデルに、そこに参加していた若い科学者「修」と、戦地から戻りまた出征する弟「裕之」、そして、二人の幼馴染である「世津」の3人の若者が、戦争状況が悪化する中で葛藤する物語である。

拡大「映画 太陽の子」全国公開中 ©2021 ELEVEN ARTS STUDIOS / 「太陽の子」フィルムパートナーズ
 日本軍の秘密の「原爆研究」というテーマは、原子力と核問題を専門とする筆者にとって、とても重要で魅力的なテーマであったので、昨年のドラマも、またその題材となったドキュメンタリースペシャル「原子の火を開放せよ~戦争に翻弄された核物理学者たち~」も逃さずに鑑賞した。ドキュメンタリーは、ち密な取材と関係者との直接のインタビューに基づき、重いテーマでありながらサスペンス映画をみるような、ストーリー性のあるドキュメンタリーで夢中になって鑑賞した。このような史実をきちんと踏まえたうえでの今回の映画化であることが、この青春映画に大きな重みを加えていると思う。
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筆者

鈴木達治郎

鈴木達治郎(すずき・たつじろう) 長崎大学 核兵器廃絶研究センター(RECNA)副センター長・教授

長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)副センター長・教授。1951年生まれ。75年東京大学工学部原子力工学科卒。78年マサチューセッツ工科大学プログラム修士修了。工学博士(東京大学)。マサチューセッツ工科大エネルギー環境政策研究センター、同国際問題研究センター、電力中央研究所研究参事、東京大学公共政策大学院客員教授などを経て、2010年1月より2014年3月まで内閣府原子力委員会委員長代理を務め、2014年4月より現職。またパグウォッシュ会議評議員を2007~09年に続き、2014年4月より再び務めている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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