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日本の永久凍土が失われていく

目立たないが身近にある気候変動の影響の深刻度

小坪遊 朝日新聞科学医療部記者

 暑い夏に冷たい話をしたい。地中の温度が1年を通じて(正確には、2年間ずっと)0℃以下の土地「永久凍土」のことだ。

永久凍土は日本にもある

 そういうと、どこか遠い国の寒い地域のことのように感じるかもしれない。実は日本にも、北海道の大雪山系や、富士山など、高い山の一部に永久凍土がある。誰でも行ける国内の山の地下にも、1年を通じて解けることのない凍った土地があるのだ。

拡大永久凍土を抱える大雪山系=国立環境研究所研究チーム提供

 だが、「少なくとも今のところは、ある」と言った方がいいかもしれない。すでに地球の温暖化は進んでいる。永久凍土は永久に凍ったままではなくなりつつある。しかも、こうした変化によって、地域の暮らしだけでなく、地球規模でも大きな悪影響を受けかねないことが徐々に分かってきた。

 今年7月、国立環境研究所の横畠徳太・主幹研究員や、米アラスカ大フェアバンクス校の岩花剛・助教らの研究チームが、国内の永久凍土の未来を占う研究結果を発表した。対象に選んだのは、大雪山系だ。気象データや将来の気候シナリオを使って、永久凍土が維持される気温環境について現状や今後を推測した。

拡大大雪山系で永久凍土が存在できる面積の過去と未来の推定=国立環境研究所のプレスリリースから
プレスリリース

 その結果、現在の大雪山系の標高1600m以上の地域は、永久凍土を安定して保てる気温環境にあり、その環境が約150平方キロにわたって広がっていると推定できた。これは、過去の観測結果とも合うものだったという。

 ところが、実は2000年くらいから永久凍土を維持できる領域が急速に減ってきているとわかった。さらに気候変動の進行に伴い、これが縮小していくことがはっきりした。2050年ごろには山頂付近の30平方キロ程度に縮み、このまま手を打たなければ2070年ごろには失われそうだという。国際的な温暖化対策の枠組み「パリ協定」の目標である、「産業革命以降の気温上昇を2℃までで安定化させる」ことを達成できたとしても、2100年には、現在の7分の1以下相当しかない20平方キロ程度に狭まると予測された(グラフ)。

 山岳の永久凍土は、山の斜面を固定し、エゾナキウサギなど、ここでしか生きられない生物のすみかを作り、登山者の安全や、高山帯の景観や生態系を守っている。環境省によると、ここ数年の大雪山国立公園全体の登山者は年に5万~10万人程度。それだけの人が山登りを楽しみ、その風景に癒やされている。地元の観光業にとっても、大きな恵みをもたらしている。

 永久凍土が解けてしまえば、山の景色や地域の暮らしは大きく変わるだろう。登山ルートを変更することや、貴重な生態系の保全策を考えないといけなくなるかもしれない。

 2021年に入り、

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筆者

小坪遊

小坪遊(こつぼ・ゆう) 朝日新聞科学医療部記者

1980年福岡県生まれ。2005年朝日新聞入社。松山総局、福島総局などを経て、科学医療部に在籍。好きなテーマは生物多様性。著書に「『池の水』抜くのは誰のため?―暴走する生き物愛―」(新潮新書)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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