原因は「貧栄養化」、2回目の法改正で行政に求められること
2021年08月25日
貧栄養化ということの意味は、要は生物が育つために必要な栄養分が足りないということである。菜園作業を行ったことがある人は良く知っている通り、肥料を与えない限り、立派な作物は育たない。海の生物もまったく同様で、成長や成熟には窒素やリンなどの元素が必須である。それらが枯渇している。
1970年代、あざやかな赤潮の写真が毎日のように新聞紙面を賑わしていた。当時、瀬戸内海を含む閉鎖性海域の水質汚濁の改善が大きな課題であった。言うまでもなく、窒素やリンは富栄養化の原因物質であり、赤潮の発生につながった。環境庁が1971年に設立され、1973年には瀬戸内海の水質を保全する法律が成立した。5年後にはこれが恒久法となり、40年以上続いている。「瀬戸内海環境保全臨時措置法」(以下、「瀬戸内法」と略す)である。
この法律はあくまでも「水質を良くすること(水質保全)」を謳ったものであり、そこに生息する生物のことは考えていなかった。というか、当時はおそらく、水質が良くなれば魚が増える、と思っていたのであろう。それがそもそもの間違いであった。最初に書いたように、生物の成育には栄養分が必要なのである。それを急ピッチで減らしてきたわけであるから、魚介類が育たなくなるのは当然である。
図1には、瀬戸内海を囲む府県で発生するリンの量(発生負荷量という)の推移を示した。平成16年までしかデータが無いのが残念であるが、現在ではさらに減少しており、ピーク時のおよそ1/3である。窒素は少し遅れて1995年から削減され、1/2程度になっている。
ところで、透明度が改善したら魚が増えたであろうか? これが問題の焦点である。図3には、瀬戸内海の魚介類生産量の推移を示した。瀬戸内法の成立からしばらく経った昭和61年(1986年)をピークに生産量は右肩下がりである。
私がこのことの原因として
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