若者を海外へ、組織や国を超えて飛び回る人材が日本を復活させる
2021年08月31日
イギリスの教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が2020年9月に発表した「世界大学ランキング」を見ると、ベスト10は米英の大学が独占し、中国は20位の清華大学をはじめベスト100に6校が入っている。日本でベスト100に入っているのは36位の東京大学と65位の京都大学のみという惨状である。
日本の大学の研究力が低迷している最大の原因は、明治以降から脈々と続く、年功序列によるヒエラルキーが形成された縦型の研究室にある。私は長らくそう主張し改善を求めてきたが、私が知る限り未だに変わっていない。これは大学研究室だけでなく、日本社会全体の問題である。それを打ち破るには、若い人がどんどん海外に出るようにするべきである。若い人の活躍無くして日本の衰退は食い止められない。縦型社会の打破こそ、いま日本が実行すべき最重要課題である。
日本の大学の問題点は、准教授や助教、ポスドク(博士号を取得している研究員)といった若い研究者たちが、高齢の教授の手足となって論文を書くところにある。教授の下請けをしていれば、論文の共著者となり、それが実績とみなされる。こうして同じ研究室に居続けた者が、実績を積み上げたことになり出世する。
文部科学省の学校教員統計調査によれば、日本の大学教員の自校出身者の割合は、全体平均で32パーセントである。これが国立大学教員となると42パーセントを超える。
スタンフォード、ハーバード、エールなどアメリカの有名大学の助教授(assistant professor)の自校出身採用率は、いずれも数パーセントにすぎない。比較的自校出身採用数の多いUCLAなどカリフォルニア大学9校の採用率を見ても22パーセントである。
そもそも米国では、大学の学部から大学院に進学するとき、あるいは大学院を修了してポスドクとして就職するとき、別のところに行くのが基本である。日本は90年代後半からポスドクを増やす政策を打ってきたが、「別のところに行くべし」という肝心の基本精神が根付かず、いつまでも同じ先生についている人が多い。こうして「縦型」の構造が温存されている。
米国オバマ政権でエネルギー長官を務めた物理学者のスティーブン・チュー博士(1997年にノーベル物理学賞受賞)は、
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