トヨタの逆張りEV懐疑戦略は成功するのだろうか?
半世紀前、排ガス規制に「抵抗」した時を想起させる
明日香壽川 東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授
自動車メーカーのスタンスの違い
周知のように、現在、世界中でEVシフトが加速度的に進んでいる。
具体的には、2025年のノルウェーを筆頭に、オランダ、フランス、英国、スウェーデン、アイルランド、スペインなどが、2025から2040年までに、プラグイン・ハイブリッドを含むガソリン・ディーゼル車の販売禁止を決めているか、あるいは検討中である。

独モーターショー でメルセデス・ベンツが展示したコンセプトEV「ビジョンAVTR」=2021年9月6日、ミュンヘン、
2021年7月15日には、EUが2035年にハイブリッドを含むガソリン車の販売禁止を決めた。アメリカはカリフォルニア州などが2035年までにZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)以外の販売を禁じる。8月5日には、バイデン米大統領が、2030年までに新車販売の占めるEVの比率を50%とする大統領令に署名した。
自動車メーカーでは、ゼネラル・モーターズ(GM)は35年までにガソリン車を全廃し、フォルクスワーゲン(VW)は2030年にVWブランドで欧州販売の7割以上をEVにする。メルセデス・ベンツは、2030年に全車種をEVにし、ドイツでは自動車労組がEVへの投資拡大を要求している。日本でも、2021年4月に、ホンダがグローバルで売る新車を2040年までに全てEVと燃料電池車(FCV)にする目標を打ち出している。
一方、トヨタは「ハイブリッドもEVも扱う全本位戦略」をとっており、これは実質的にはハイブリッドへの逆張り戦略とも言える。米国でのトランプ政権時代、トヨタは三菱自動車やGMなどと一緒に政権側について、カリフォルニア州が厳しい排ガス規制を独自に設定するのを阻止しようとした。これに対して、フォード、ホンダなどは、反トランプを鮮明にして、カリフォルニア州の規制強化を支持した。
このようなトヨタに対して、
・・・
ログインして読む
(残り:約2813文字/本文:約4450文字)