「雑草対策が大変なモンスーンの日本では有機農業は難しい」は、本当か。
世界的に拡大するオーガニック市場と欧州の戦略
香坂玲 名古屋大学大学院教授、日本学術会議連携会員(環境学)
雑草、モンスーンは有機農業を阻む?

草原もビオトープ(生物空間)として利用。看板には「新鮮な卵あります」=2019年2月、ドイツ・ボン郊外、筆者撮影
前置きが長くなったが、風土論を知ってか知らずか、雑草とモンスーンは、日本の有機農業を語る際、正確には「日本の有機農業が広がらない理由」を語る際に頻出するキーワードとなる。いわく「有機農業が盛んな欧州と日本では気象条件が異なり、モンスーンの日本では有機農業は難しい」「雑草対策が大変な日本では、有機は展開できない」といった具合だ。「とにかく欧州と単純に比較して、日本は遅れていると言ってくれるな」というトーンになる。
ただし、欧州との比較の是非はともかくとしても、地勢の違いを前提としながらも、日欧の共通の課題もあり、参考となる点はありそうだ。農林水産省が持続可能な食料システムの構築を目指して2021年5月に策定した「みどりの食料システム戦略」は、農地に占める有機農業の割合を2050年までに25%にする目標を掲げ、マスコミでも大きく取り上げられたが、欧州ではちょうど1年前の2020年5月に欧州委員会(EC)が策定した「農場から食卓へ戦略」で既に有機農業25%が掲げられており、しかも2030年までの期限となっている。
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