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続・協力者を置き去りにしてアフガニスタンを去った米国

「戦争をしている暇などない」と訴えた中村哲医師が描いた平和とは

山井教雄 漫画家

 

2001年9月11日には、ビン・ラディン、アルカイダはハイジャックした旅客機をニューヨークのトレードセンタービルに突っ込ませました。ビルは完全に崩壊、3000人の犠牲者を出しました。9.11ニューヨーク同時多発テロ事件です。当時のブッシュ(息子)米大統領は、すぐさま「テロとの戦争」を宣言し、ビン・ラディンとアルカイダをかくまうアフガニスタンのタリバン政権を攻撃し始めます。

 まず、CIAが大量のドルを持っていって、アフガニスタン軍閥を抱き込み、彼らと米地上部隊が協力して送ってくる情報で、タリバン部隊の正確な位置をつかむと、GPSやレーザー光線で誘導されたスマート爆弾が、はるか上空を飛ぶジェット機から飛んできて、ピンポイント爆撃する。1カ月半で1万発の爆弾を落とした後、アフガニスタン軍閥同盟がカブールを攻撃すると、タリバンはほうほうの体でカブールから逃げ出し、地方やパキスタンに身を隠しました。

 2010年、パリの市立図書館で展覧会を開きました。場所柄、小中学生など、子供の観客も大勢見にきました。ヨーロッパの漫画家たちと、中東問題の漫画を中心に展示しました。中で最も支持を得たのが左の漫画です。

 アフガニスタンでは、タリバンも、軍閥も、アヘン、ヘロインの原料であるケシを違法に栽培して、主な軍資金としているのを風刺した漫画です。インタビューに来たフランスTVのアナウンサーに「この漫画は、アフガン内戦も、タリバンのケシ栽培も、糾弾していない。人類の長い歴史の中での一つの悲劇だと悲しんでいるだけだ。だからユニークでいいんだよ」と言われ、フランス人の漫画リテラシー(漫画理解度)の高さにビックリしました。

 この漫画は下半分、ケシ畑の中のタリバンの絵だけでも漫画として成立していますが、あえて背景にヒマラヤ山脈と雲を描き加えることにより、悠久の時間が流れ出し、アフガニスタンの争いばかりの長い悲しい歴史を思い起こさせるのでしょう。

 2019年に殺された中村哲医師も、
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