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「科学技術創造立国」の「創造」が消えた

岸田首相の所信表明演説から考える「政治と科学」

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

拡大衆院本会議場で、所信表明演説をする岸田文雄首相=2021年10月8日午後2時3分、国会内
 岸田文雄首相は10月8日の所信表明演説で「成長戦略の第一の柱は、科学技術立国の実現です」と述べた。「科学技術創造立国」と言わなかった。科学技術創造立国は、1995年に科学技術基本法ができるころから使われるようになった言葉である。あえていえば、当時の日本政府が作った造語であり、固有名詞と位置付けることができる。科学技術立国は一般名詞だろう。一般名詞の「科学技術立国」の実現を目指す岸田首相が、まずやるべきことは何だろうか。「創造」の2文字が消えたことは何を意味するのだろうか。

「日本は応用研究で金もうけ」米国からの批判に反論

 後者の問いに対する一つの答えは「何の意味もない」だろう。おそらく内閣府に尋ねれば、「特段の意味はありません」という答えが返ってくるに違いない。科学技術への投資を増やし、成長を促す戦略をとることを表すのに「科学技術立国」という一般名詞を使ったに過ぎない、というわけだ。

 だが、私は意味を感じずにはいられない。なぜなら、「科学技術創造立国」というスローガンが誕生した理由を聞き知っているからだ。発端は、日本の自動車や家電製品などが世界中で売り上げを伸ばした80年代に、米国から「日本は応用研究をして金もうけするばかりだ」と批判する「基礎研究ただ乗り論」をぶつけられたことだ。「いやいや、日本も基礎研究をどんどんやります」という意思表示として「創造」の2文字が入ったのである

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筆者

高橋真理子

高橋真理子(たかはし・まりこ) ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

1979年朝日新聞入社、「科学朝日」編集部員や論説委員(科学技術、医療担当)、科学部次長、科学エディター(部長)、編集委員を経て科学コーディネーターに。2021年9月に退社。著書に『重力波 発見!』『最新 子宮頸がん予防――ワクチンと検診の正しい受け方』、共著書に『村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか?』『独創技術たちの苦闘』『生かされなかった教訓-巨大地震が原発を襲った』など、訳書に『ノーベル賞を獲った男』(共訳)、『量子力学の基本原理 なぜ常識と相容れないのか』。

 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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