小島正美(こじま・まさみ) 食・健康ジャーナリスト
1951年愛知県生まれ。愛知県立大学卒業。2018年まで毎日新聞記者。現在はメディアチェック集団「食品安全情報ネットワーク」共同代表。著書に「メディア・バイアスの正体を明かす」など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
中国から輸入した塩蔵茎わさびに、ヨウ素。超微量も、食品添加物に未指定
中国から輸入された「塩蔵茎わさび」を使ったお茶漬けのりなどの製品が次々に自主回収・廃棄されている。新聞やテレビではほとんど報道されていないが、日本では食品衛生法で認められていないヨウ素を添加した塩が使われていたためだ。いくら法令違反とはいえ、海外では普通に流通しており、食べて危ないわけではない。10月は農林水産省、消費者庁、環境省が推進する「食品ロス削減月間」だ。食品ロスが社会的、世界的な課題になっているいまだからこそ、今回の回収事案を機に、法令違反と自主回収の在り方を再考する議論を始めるべきではないだろうか。
今年9月以降、「おむすびころりん本舗」(長野県安曇野市)や「ハナマルキ」(長野県伊那市)など約20社が、わさび茶漬けやふりかけなどの自社製品を次々に自主回収している。いずれも中国から輸入された「塩蔵茎わさび」を原料にしていたが、日本では食品衛生法で認められていない指定外添加物のヨウ素を加えた食塩(ヨウ素化塩)が使われていたことが分かったからだ。
ヨウ素化塩が使われていた塩蔵茎わさびを中国から輸入していたのは、東海澱粉(静岡市)とイビデン物産(岐阜県本巣市)の2社。今回の自主回収の大半を占める原料の供給元である東海澱粉は、8月末までに自社チェックでヨウ素化塩の使用を知り、静岡市保健所と協議した結果、法令違反に当たるため、自主回収を決めた。その後、2社から塩蔵茎わさびを購入した加工食品会社が次々に自社製品を回収しているというわけだ。
ただ、ヨウ素化塩は中国や米国、豪州、スイスなどでは食品での使用が許可され、ごく普通に流通している。しかし、日本では、ヨウ素は食品添加物として指定・許可されていないため、食品衛生法でヨウ素化塩を使った食品も販売が禁止されている。
なぜ、対応が違うのか。ヨウ素自体は必須栄養素で、子供たちの発育に欠かせない甲状腺ホルモンを構成する重要な成分だ。このため、ヨウ素不足になりやすい海外では、食塩やパンに添加して補っている国が多い。一方、ヨウ素の豊富な海藻類や魚介類をよく食べる日本ではヨウ素不足になることはまずない。
こうした事情から、日本ではこれまで、ヨウ素の食品添加物としての指定を申請する事業者がなく、指定されない状態が続いており、それが今回の法令違反の背景の一つになっていると言える。
法令違反であれば、自主回収して廃棄するのは当たり前という声もある。だが、議論してほしいのは、添加されていたヨウ素が極めて微量でも回収、廃棄するのか、という点だ